特集の傍流

2020.10.30

山形から最高の革靴を届けるために、宮城興業の開発と挑戦。

2020年11月号(193号)一心一足のものづくり。
宮城興業株式会社
山形県南陽市

 南陽市にある『宮城興業株式会社』は、1941(昭和16)年に宮城県仙台市で創業した革靴メーカー。創業時は軍靴の製造を行っていたが、終戦を機に民需へと転換。1969(昭和44)年には、革靴の本場イギリスの老舗であるバーカー社と技術提携を結び、高橋和義現社長も実際にイギリスでその技術を学んできた。

 

社屋の入り口には「英国バーカー社と技術提携」の字が。古くからいち早く英国の技術を用い、革靴の製造を行ってきた。

 

高級靴の代名詞、イギリス直伝の伝統製法

 バーカー社から学んだ技術というのが「グッドイヤーウェルト製法」。高級靴の代名詞とされる伝統的な製法で、履いていくうちに中底が足の形に沿って変形し、独特なフィット感が生まれる。丈夫で、ソール交換もしやすく、メンテナンスを欠かさなければ、何十年と半永久的に履くことが可能になるサスティナブルかつコストパフォーマンスが良い製法だという。

 

専用のミシンを使いアッパーとソールを縫い付けていく「グッドイヤーウェルト製法」。いくつもの複雑な工程を経て、重厚感のある丈夫な靴が出来上がる。

 

コルクでできた中底も「グッドイヤーウェルト製法」の特徴だ。このコルクが変形していくことで、徐々に自分の足に馴染む靴になる。

 

アウトソールを縫い付けていく。靴の中で一番消耗の激しいパーツだが、宮城興業の靴はこのアウトソールだけを取り替えることができ、修理しやすくなっている。

 

新たな挑戦、自社ブランドの強化とトランクショー

 創業以来、長らく他社ブランドの受託製造を中心に経営を続けてきた宮城興業だが、近年は豊富なデザインや素材を組み合わせて自分だけの靴を作るオリジナルカスタムメイド・システム「謹製誂靴(きんせいあつらえぐつ)」のほか、独自ブランドの展開にも力を入れている。ビジネスマンのアクティブなライフスタイルに寄り添ったレザースニーカーの「MY(えむわい)」や、もっと気軽に若い人にも革靴を履いて欲しいという思いから生まれたフレッシャーズ向けの「Jinto(ジント)」、さらに、製造過程で生じた革の端材を使って、トートバッグなどの小物として蘇らせる「Tuff Stuff(タフスタッフ)」は、会社内にショールームもあり、平日の営業時間内であれば一般客も購入可能だ。

 

136通りのサイズ、60パターンのデザイン、50種類の革から選べる「謹製誂靴」。世界に一つだけの自分好みの靴を作ることができる、靴愛好家にはたまらないカスタムメイドシステムだ。

 

最新のレーザー加工機で繊細な模様を施した「MY(えむわい)」のスニーカー。

 

11月号の読者プレゼントにもなっている「Tuff Stuff」のコインケース。本革ならではの柔らかい質感と経年変化が楽しめる逸品。

 

 また、コロナ禍で国内のみならず海外での展示会も相次いで中止になる状況から、新しい取り組みとして取扱店向けのサービス「トランクショー」を展開。トランクにアイテムを詰めて取扱店へ送り、店舗にて受注会を開いてもらうスタイルだ。店舗では在庫を抱える必要がなくなり、メーカーの宮城興業としては効率的な受注が可能となる。同時に商品のPRにもつながっていく。

 

地元へ感謝の思いを伝える恒例イベント

 もっと多くの地元の人に宮城興業の商品の良さを知ってもらいたい、と会社で毎年行われる「大感謝祭」。今週末の10月31日(土)、11月1日(日)は地元の飲食店が出店する「ミヤギマルシェ」が開催予定。親子でできる革小物ワークショップや抽選会も同時に行われる。詳しくは公式ホームページへ。

 

サンプル品の販売もあり、サイズが合えばお買い得に購入できる。

 

 「革に勝る素材なし、熟練された技に勝る機械なし」という企業理念のもと、伝統的な技術は守りながら挑戦を続ける宮城興業。その技術に惚れ込み、靴作りを学びたいと全国から就職希望者が集まる。山形から、日本から最高の靴を届けたいという職人の純粋な思いと矜恃。多くの靴愛好家に永く愛される理由がそこにはあった。

 

取材に応じてくれた営業の松下紳吾さんも県外からの就職者。「新しいものを考え発信し、エンドユーザーまで届けていきたいです」と熱い思いを語ってくれた。

 

宮城興業)南陽市宮内2200 TEL /0238-47-3155 WEB /https://miyagikogyo.co.jp

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