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北海道のニシン漁で有数の漁業家として大成功を納めた青山留吉が、生まれ故郷の遊佐町青塚に新たな本邸を構えたのが明治23年のこと。主要8室の母屋と蔵、離れからなり、室内の意匠は柱や長押、差鴨居などに春慶塗を施した豪奢なものであった。
当時の青塚は茅葺きや石置杉皮葺きの屋根が連なる漁村で、瓦葺きの母屋の大屋根は、北海道に魚場を求め努力を続けた留吉の成功を具現化したものであった。現在は、国重要文化財の指定をうけ、『旧青山本邸』として一般に開放され、青山留吉の偉大な業績や、庄内地方に根づいた文化・風習に関する展示などにも利用されている。
明治・大正の時代を生きた、漁業王「青山留吉」の偉功を感じながら見る、
貴重な遊佐と庄内の刺し子着や、覆面習俗ハンコタンナの企画展。
津軽こぎん、南部菱刺しと並んで、日本三大刺し子のひとつとされる「庄内刺し子」。なかでも遊佐町に伝わる刺し子は、独特の美しい文様と種類の多さなどが特徴になっている。昭和30年代後半にプロパンガスなどが急速に普及するまでは、燃料となる木材の運搬時や田仕事時に着ていた橇曵き法被(そりひきはっぴ)などに、布地の補強とデザイン性を両立させるため、この刺し子が縫いこまれていた。
「先人たちは智恵を絞りあい、さまざまな文様を考案し、刺し子のある生活を楽しんでいたのではと考えられています。また、橇曵き法被の肩から斜めに垂れている部分は、クッションの役割のほか魔除けとお洒落のために、刺し子の柄が150種類以上もあるんです」と語ってくれたのは、企画展「遊佐と庄内の刺し子」を主催する、遊佐町教育委員会の阿部秀雄さん。時代の経過で保存されている現物も少なくなりつつある現在、庄内や遊佐で語り継ぎ繋いできた独特の文化・風習を、その目で確かめてみよう。

旧青山本邸で開催される企画展「遊佐と庄内の刺し子」は、2019年2月24日まで。3月1日からは展示物を入れ替えて6月30日まで開催。

今回の企画展では、旧青山邸に残る「海の刺し子」ドンザや、鳥海山信仰とも関わっているとされる「橇引き法被」、庄内北部を中心とした覆面習俗「ハンコタンナ」、LLP遊佐刺し子ギルドのメンバーによる遊佐刺し子と現代キルトのコラボ作品などを展示。

木材をそりで運ぶ出す時に着た「橇曵き法被」。動きやすいように裾の両側がカギ状に欠けたものが遊佐ならではのものだという。

今和次郎が描いたハンコタンナの巻き方(複写・昭和13年頃) ©工学院大学図書館今和次郎コレクション

旧青山本邸には、漁業で成功をおさめた青山留吉の生涯や当時の青山家の繁栄を物語る多くの文化遺産を展示。青山留吉に関する常設展もこの機会に。

旧青山本邸
電話/0234-75-3145
営業時間/9:30〜16:30
定休日/月曜(祝日の場合翌日)12/29〜1/3
入館料/大人400円
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