2026年1月号(255号)
特集|やまがた推し芋考
寒河江市(南部)皿沼地区
肥沃な土壌が味方して種芋の一大産地に
寒河江市南部地区、とくに最上川河川周辺は水はけが良く肥沃な土壌として知られ、古くから里芋の栽培が盛んに行われていたという。取材に訪れた高屋地区は、近年は冬でもいちご狩りが楽しめるスポットとして知られたエリアだが、じつは里芋栽培、とくに種芋の産地として名を馳せた歴史を持つ。

そもそも「さがえ子姫芋」とは
日本最大急流のひとつ最上川に面する寒河江市南部の皿沼地区。水はけが良く肥沃な土壌は、古くから里芋の栽培が盛んに行われてきた。また、南部地区は過去に繰り返された最上川の氾濫によって砂と土が混ざって形成された「砂壌土」は、水に強い性質を持つ里芋にとって最適な土壌であることも特産地の背景となっている。もともと地元でしか味わえなかった「子姫芋」は里芋の一種であり、江戸時代末期より受け継がれている伝統野菜。山形の名物である「いも煮」の主役として、昔から地元の人に愛されてきた品種だ。
農家では収穫した里芋を翌年の作付時期まで、繁殖させるための種芋として保存しなければならないのだが、山形の冬は積雪と冷え込みが厳しいため、通常の保存では傷んでしまう。しかし、当地区では農家の長年にわたる経験により、適切な保存方法を会得し、長期保存による供給期間の長期化にも取り組んできた。そして現在、長期保存と安定供給が本格化。そのやめらかで粘りのある食感と仄かな甘みが定評を得て、都市部での消費拡大に繋がっている状況だ。(出典:寒河江市 企画創成課「さがえ、心地。」子姫芋についてより一部抜粋)



どこよりも古くから貯蔵の技術があった
「寒河江の伝統野菜といったら子姫芋と食用菊、谷沢梅の3つ」と教えてくれたのは、さがえグリーンパーク代表の武田さん。「この地域では江戸時代には種芋を越冬させる技術があって、農家はみな屋敷の下を掘って貯蔵し、春になると県内外へ種芋を販売し資金調達に役立てたんです」と話す。そうして子姫芋は受け継がれてきたが、2016年に、将来的にも同品種を守り継いでいこうという機運が高まり組合が設立。2017年には優良系統が選別され、より食味のいい〝さがえ子姫芋〟の栽培を目指すとともに、販路拡大も積極的に行われてきた。「土垂れ系の芋の生育には水の管理が重要。水源が近く土壌に恵まれているおかげで、当社では無農薬で栽培しています。そして水害にも強い」とも。




子沢山は子孫繁栄の象徴縁起のいい作物として
本来の旬は10〜11月だが、郷土食としての芋煮需要で首都圏などの取引先から催促が来てしまうことから、9月中旬には出荷が始まり、冬の間はそれが続く。皮付きのほか、皮なしの真空パック品も販売されている。粘りがあって柔らかく、甘味を感じる食味が特徴だ。「祭りや正月など、この辺りではめでたい場面で芋煮を食べる風習がある」という。縁起ものには欠かせない存在だ。

おいしい食べ方
里芋はホクホクな食感にするために、電子レンジで下ごしらえするのがコツ。電子レンジにかけた子姫芋に牛肉を巻き付け、醤油とみりんで味付けしてフライパンで焼く。子姫芋のキムチ漬は、固い食感から廃棄されていた親芋の部分を加工したもので、なめらかさとシャキシャキさが混在した食感で一躍人気に。2024全国漬物グランプリで銀賞を獲得した逸品で、お酒のアテにも好適。

固い親芋の特徴を生かし、生食が出来ない里芋を漬物加工する事で、シャキシャキとした今までにない新しい食感のキムチ


レンジでふかした里芋にカリッと香ばしく焼いた豚肉が好相性。好みで黒こしょうをかけて

さがえグリーンパーク
代表 武田幸太郎さん
寒河江市大字高屋を拠点に、寒河江の伝統野菜である「子姫芋(こひめいも)」や、寒河江名産の「若にんにく」やさくらんぼの栽培、観光いちご園の運営、特産品を使った加工食品の製造などを行う。子姫芋は、JAさがえ西村山のアグリランドおよびチェリーランドなど、寒河江市内の直売所で購入可能。
さがえグリーンパーク
www2.ic-net.or.jp/~icrose/
さがえ、心地(寒河江市企画創成課)子姫芋について
sagaecitypromotion.jp/kohimeimo

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