里芋の古名は「家芋」。いえのいもとして、古くは室町時代から親しまれてきた

2026年1月号(255号)
特集|やまがた推し芋考
山形県内全域

山形の芋煮の味の決め手は、牛肉の旨味を纏った、ほくほくの里芋。里芋の旬は品種によっても異なるが、東京中央市場で最も出回るのは12月。今回はそんな「芋」にフォーカスを当て、県内で唯一無二の地芋について取材。

山形市における「里芋」の年間支出金額は全国トップ※1

山形県民にとってのキング・オブ・郷土料理といえば、やっぱり「芋煮」。地域によって味付けや具材を変化させながらも、旬の里芋をおいしくいただくために、多くの山形県民は惜しみのない情熱を傾けている。それを証明しているのが、山形市の里芋の年間支出額だ。全国平均が1,641円なのに対し、山形市は3,120円と倍の数字を叩き出している。近年は産直やスーパーなどで産地限定のブランド芋が販売されていたり、その評判が聞こえてくることもあり、その真価を確かめるべく、今回は芋、おもに里芋に注目して特集取材を進めることになった。

※1/出典:総務省「家計調査(二人以上の世帯)」(令和4〜6年の平均値)

収穫間際の里芋畑(子姫芋)には人の背丈ほどに成長した葉が生い茂る(写真協力:寒河江市農林課)
甚五右ヱ門芋の皮むき作業の様子

稲作前の主食だった里芋人口が増えたのも??

日本に里芋が伝来したのは、縄文時代の後期から弥生時代の初期とされている。「稲作伝来前の時代に人口が増えたのは栄養豊富な里芋のおかげ」と提唱する大学教授※2がいるなど、古くから人々の食生活を支えてきた作物である。食物繊維やカリウムを多く含み、腸内環境を整えるだけでなく血圧を下げる作用や利尿作用、老廃物や毒素を効率よく排出する働きもあるという。また、里芋は親芋のまわりに子芋がたくさんできることから、子孫繁栄の縁起物として昔から親しまれてきた。年末年始に作られるおせち料理では、筑前煮や白煮(はくに)などで登場することも多く、日々の暮らしのなかで折節を感じるきっかけになっていると言えよう。

※2/静岡大学農学部の本橋令子教授。里芋についての研究論文を発表している

じつは皮も食べられる里芋揚げる、のもあり

里芋は皮つきだと剥く手間がかかるので敬遠しているというかたもいるのでは? じつは里芋もさつまいもなどと同様に、皮ごと食べることが可能。生の里芋を洗う際に、ケバ立ちを金たわしでこすり落としたら片栗粉をまぶし、冷たい油の状態からじっくり火を入れて揚げるのがコツ。揚げることで皮が口に残らず食べやすくなり、里芋のねっとり感と皮のパリパリを同時に楽しむことができる。

皮付きの状態で出荷される寒河江市産の「子姫芋」。皮と泥付きの里芋の方が鮮度が保たれやすく、なおかつ皮にしっとりと湿り気があるものを選びたい

山形県内の芋分布

山形県で古くから作られている地芋をリサーチし、見つかった在来種または地域の特産品として積極的な活動を行っている地芋を地図に落とし込んでみた。未掲載の県内の地芋情報をお持ちのかたは、gatta!webの問い合わせフォームから情報をお寄せください。

こんなにあった山形特産の芋

今回取材を進めてきたなかで得た一番の収穫は、県内各地域にそれぞれの推し芋があり、想像していたより多くの地芋の存在を確認できた点にある。その豊富な栄養価で人々を支えてきた“芋”の食文化が、小さなコミュニティのなかで脈々と守り継がれ、また未来へと紡がれていく。どこかでその営みが途切れていたらいまこの時代には出合えていなかったと考えると、つないでくれた生産者には賛辞を贈る他ない。使い捨てやタイパ、コスパ、さらに利便性と合理化が推奨される風潮にあるなかで、手間を惜しまずに種芋を育て、先人の知恵と経験を蓄積し、我々はそれを感謝とともに食して共鳴する。真の郷土理解はこうした体験の積み重ねからこそカタチ作られていくように思う。

「芋煮」は秋の収穫を祝う場面はもちろん、家族の慶事や地域行事でも振る舞われる山形郷土料理の代表格

芋は分類すると大きく2つ

山形の地芋について読み進めるにあたり、はじめに芋類を分類して覚えておきたい。下図の通り、里芋は塊茎(かいけい)。土のなかにある地下茎が肥大化したもので、茎が食用部分となる。一般的な品種は土垂(どだれ)で、保存性が良いことから生産量は関東地方が多い。一方さつまいもや自然薯は塊根(かいこん)。肥大化した根の部分が食用となる作物だ。さつまいもは品種が多く、鹿児島、茨城が生産地として有名。またヤマイモ科で唯一日本原産の自然薯は国内各地の山野に自生している。

さといも 分類:塊茎、主成分:でんぷん、特徴:貯蔵性が高い
じゃがいも 分類:塊茎、主成分:でんぷん、特徴:加熱に強い
こんにゃくいも 分類:塊茎、主成分:グルコマンナン、特徴:アルカリ性
キクイモ 分類:塊茎、主成分:イヌリン、特徴:水溶性食物繊維
やまいも 分類:塊根、主成分:でんぷん、特徴:生食向き
さつまいも 分類:塊根、主成分:でんぷん、特徴:甘味が多い
自然薯(じねんじょ) 分類:塊根、主成分:でんぷん、特徴:強い粘り

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