2026年に行くべき山形の“馬” 乗馬編

2026年2月号(256号)
特集|それいけ!ウマガタケン
山形県村山地方

馬の品種ってじつは200種類以上も

農耕馬や荷物を運ぶ家畜として、また戦の場面では騎馬となり、古い時代から人間と深く関わってきた「馬」。品種によって体の大きさやスピード、パワーも違うという。多くの人がイメージするのは颯爽と駆け抜けるサラブレッド系種の姿ではないだろうか。サラブレッドはアラブ馬とイギリスの在来馬ハンター等から品種改良で生まれた馬だ。

日本に在来馬はいる?山形には?

日本の在来馬は古墳時代に導入された蒙古系家畜馬と考えられていて、現存するのは北海道和種の道産子(北海道)、木曽馬(長野)、トカラ馬(鹿児島)、野間馬(愛知県)、対州馬(長崎県)、宮古馬(沖縄県)、与那国馬(沖縄県)、そして国の天然記念物に指定されている御崎馬(宮崎県)の8種類。それぞれが日本各地の気候風土に適応し、農耕や運搬などで活躍した固有の馬種で、文化遺産としても保護されている。これらは、明治以降の改良が加えられなかった地域で、古くから日本にいる馬(モンゴル系起源とされる)が独自に発展したもので、小型で丈夫なのが特徴だ。だが、馬たちの役目だった農耕や荷運びはいまや車やトラクターといった機械化が進み、残念ながら山形を含む東北地方には在来馬はすでにいない。

ホースガーデンむらやまの厩舎にて。馬術指導と飼育を担当する庄司修さんと、人懐っこいハフリンガー種のアリーくん。山形県内のとくに村山地方では、インストラクターの指導のもと気軽に乗馬体験できる施設がいくつも点在する。乗馬視点で眺める山形の風景は、また別次元の魅力があるようだ

人と暮らしていた馬は性格が温厚、癒し効果も

サラブレッドのような競走をするために生まれた馬の気性は荒いが、日本の在来馬や小型のポニー種などは本来、人々の相棒として活躍してきただけあって性格は温厚。そのためホースセラピーとして、障害を持った人たちの運動機能や精神機能の改善のための活動や、子どもたちの情操教育といった場面など近年活躍の場を広げている。

馬と歩くことで身体と心が整うひとときに

馬は比較的寒さに強く、ここで紹介するスポットは冬でも乗馬体験が可能。馬上からの視界は、騎乗してこそ味わえる新鮮な感覚。乗っているだけで姿勢が整い、運動効果も期待できるという。言葉を交わせなくとも、馬を撫でたりおやつをあげたりするうちに、自然と心がほぐれていく。リフレッシュ効果も折り紙付きだ。

『ホースガーデンむらやま』

村山市ののどかな田園地帯に位置する「ホースガーデンむらやま」は、まず目を引くのが八角形の巨大な屋根を持つ全天候型屋内馬場。東北特有の冷たい雨や雪といった天候の変化に左右されることなく、一年中いつでも快適に乗馬を楽しめる環境が整えられている。

施設内では初心者や子どもでもスタッフが手綱を引くことで安心して馬の背に揺られることができる「引き馬体験」から、つぶらな瞳が愛らしいミニチュアホースと一緒に園内を歩くことができるお散歩体験、さらには乗馬の基礎をじっくりと学びたい方のための本格的なマンツーマンレッスンまで、利用者のレベルやリクエストに合わせた多彩なプログラムが用意されているため、家族連れの観光客から生涯スポーツとして乗馬を志す人まで誰もが気軽に馬と触れ合える点が大きな魅力だ。

さらに、交通至便な立地でありながら、周囲を美しい山々と田園風景に囲まれた開放感あるロケーションは、時折近くを通り抜ける山形新幹線「つばさ」を眺めながら、園周辺の緑豊かな小径をゆったりと乗馬できるという他にはないスポット。人懐っこく穏やかな気性の馬たちと心を通わせる体験は、単なるアクティビティを超えて動物との絆を感じる「ホースセラピー」の効果をもたらしてくれるはず。また、きめ細やかな管理体制とインストラクターやスタッフの温かな人柄も相まって、一度訪れればまた馬たちに会いに来たくなる場所。地域の人々と観光客の両方に愛される馬場だ。

ポニーをはじめ12頭の馬を飼育。場内は常に清潔に保たれており、乗馬前のブラッシングで馬もゴキゲン。ヒヅメの手入れでもクイっと自ら脚を上げてくれる
屋内の引き馬体験を案内してくれた庄司さん。安全のためのヘルメットも常備し、初心者の方でも安心して乗馬を始めることができ、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートしてくれる
スタッフが引率する引き馬体験は1,000円〜。雨や雪に左右されない場内コースも有り
乗馬だけでなく撫でたり話しかけたりして、馬とのスキンシップをはかるのも楽しみのひとつ。また、屋外の馬場や散策道も人気で、冬季は純白の銀世界が一面に広がる。四季の村山の景色とともに乗馬を堪能できる
草食動物の馬にとって不可欠な飼料である牧草。馬の名前ごとに牧草に目印が貼られ、量や時間が管理されていた
予約不要で馬と触れ合えるおやつ(300円)は、それぞれの馬がおねだりするときの性格やおやつの食べ方などを間近で見ることができる
おやつを与えながら撫でたりして触れ合うだけで、馬の温もりが伝わり不思議と笑顔になれる。独特の癒し効果が感じられた
ホースガーデンむらやま敷地内には、受付と休憩ができるロッジがあり、八角形の屋根が印象的な屋内馬場では、雨や雪に左右されることなく一年中快適に乗馬を楽しむことができる

ホースガーデンむらやま

鶴岡市羽黒町手向字手向7
村山市大字本飯田柳堤2486-46
TEL0237-55-6859
9:00〜17:00
umakko.com
google map

雄大な風景が待つ高原で、馬そして自分と向き合える場所

最上町の「わくわくファーム前森高原」は、栗駒国定公園の裾野から山形県側に広がる360度山々に囲まれた大草原に位置し、乗馬やキャンプが楽しめるアウトドア施設。広大な牧場の一角にあり、美しい自然と満天の星空が魅力で、初心者でも利用しやすいバンガローやコテージも完備。標高が高く、見渡す限りの緑と広い空に包まれ、まさに“天空の楽園”と呼ぶにふさわしいロケーションだ。

最たる魅力は、やはり優雅な馬たちと触れ合える乗馬体験。初心者でもスタッフのガイドにより高原の風を感じながら散策を楽しむことができる。また、人懐っこいヤギやヒツジへのおやつフィーディング、さらには広大な敷地を豪快に駆け抜けるバギー体験など、大人から子供まで五感を使って遊び尽くせるアクティビティが充実している。食の楽しみも格別で、ドイツの伝統的製法で仕上げた自家製ソーセージや、地元の新鮮な生乳を贅沢に使った濃厚なソフトクリームは、訪れる人々を笑顔にしている。

夜になれば、街の灯りが届かない場所だからこその満天の星空が広がり、自然を肌で感じられるキャンプから家族でも安心のキャビンまで様々に楽しめる滞在は日常を忘れさせてくれる最上の癒やしとなるはず。圧倒的開放感がある豊かな自然のなかで「遊ぶ・食べる・泊まる」のすべてが高いクオリティで揃う楽園。それが、前森高原が愛され続ける理由なのだろう。

自然を堪能できるトレッキングコース
1,000円で楽しめる馬場内1周の引き馬体験
四方を山に囲まれロケーション抜群の前森高原で乗馬が体験できる

わくわくファーム前森高原

最上町大字向町2135
TEL0233-43-3522
10:00~17:00
maemori.jp
google map

蔵王連峰を眺めながら馬に癒されるスポット

ホースセラピーの活動をきっかけに、長年「やまがた馬まつり」を主催している高橋千秋さんが運営する『うまのすけcafe』。ホースセラピーとは、乗馬や馬との触れ合いを通じて心身のリハビリテーションやQOL(生活の質)向上を目指す療法で、欧米発祥のアニマルセラピーの一種だ。馬の温もりやリズム運動が身体機能の改善に繋がり、精神的な安定やコミュニケーション能力の向上も期待できることが数々の実証でわかっており、医療・福祉分野で活用されている。

cafeでは、目の前に蔵王連峰が広がる自然豊かで広いカフェの敷地内で、ポニーのロイちゃんやミニチュアホースのボブくんと一緒に乗馬や引き馬、エサやり体験などが楽しめる。さらに冬期以外は毎月1回、外部の乗馬クラブから大きな馬がやってきて乗馬体験を実施したり、イベントなどへ出張乗馬も行うなど、馬に癒されたい人々の信望を集めている。

そもそも、千秋さんがホースセラピーの可能性を確信し、その普及に人生を捧げる原点となったのは、2001年に障がい者支援施設の職員として、ご自身の勤める施設の利用者さん数名を連れて川西町の乗馬施設を訪れた際の衝撃的な体験から。それまで施設内では一度も笑顔を見せたことがなかった聾唖の利用者が馬にまたがり、馬がゆっくりと歩き出した途端に、これまでに見たことがないほどの満面の笑みを浮かべたのだ。その様子を撮影した写真を見た母親が「こんなに嬉しそうな顔は初めて見た」と涙を流して喜んでくれたという、馬が持つ癒やしの力を目の当たりにした体験だ。

この出来事を通じて、馬との触れ合いが人間の精神や身体に及ぼす計り知れない影響力に深い感銘を受けた千秋さんは、障がいの有無にかかわらず誰もが馬との“言葉を超えた心の交流”ができる社会の実現を目指し、活動を勤務先に直談判して施設内に専用の乗馬場を開設したほか、現在まで続く「やまがた馬まつり」の創設や、退職後の乗馬体験型Cafeの運営など、馬を通じた共生社会づくりに尽力し続けている。

山形市在住でアート作品展も開催している自閉症の男性「てっちん」こと長演哲哉さんが描いた、うまのすけcafeのイラストが店内にも飾られている
障がい者支援施設で勤務していたときに出会ったホースセラピー(障がい者乗馬)の体験と感動が、「やまがた馬まつり」の開催や、いまの乗馬体験cafeの活動につながっているという千秋さん
晴れた日には蔵王連邦が一望でき、「はらっぱ館」近くの緑豊かなエリアに位置する『うまのすけCafe』
2026年3月には敷地内に念願の厩舎が常設されることが決定。
ポニーのロイちゃんやミニチュアホースのボブくんほか、定期的に大きな馬ともふれあえるイベントも開催
千秋さんが実行委員長を務める馬まつりのキャラクターと名前がモチーフ
手作りの馬さんクッキーがちょこんと顔を出す、人気のフルーツカップソフト

うまのすけcafe

山形市みはらしの丘2-37-3
10:00〜17:00
月曜・火曜定休(祝日は営業)
umanosuke-cafe.com
google map

gatta! 2026年2月号
特集|それいけ!ウマガタケン

gatta! 2026年2月号
特集|それいけ!ウマガタケン

(Visited 7 times, 7 visits today)