だれかの散文

2017.4.4

第12回:記憶コレクションの中から。ブラジルアマゾン編


「これにライムを搾って食べると美味いんじゃ」

 

木の皮をペリペリとめくったところに現れたロープほどの太さの生ミミズを差し出されたアマゾン滞在。「ほんとだ!」と思えなかった13年前の私は、他にもこんな食べ方があるのよとお母さんが作ってくれたミミズ入りスープ(トマトや刻みパセリなどを入れたおしゃれスープ)をいただきました。さっぱりとした味のスープの中でネッチリなミミズの皮であろう歯ごたえは新食感。だけど「お母さんお代わり!」と言えなかったからか編集でカットされ、記憶に貴重な思い出のみいただきました。

 

エコな暮らしを考えるために世界の環境がどんな風に変わっているかをテーマにした番組のロケでブラジルに滞在すること3週間。サンパウロからスタートし、あちこち取材をしながら移動を続け、先の暮らしぶりを教えてくれたのはマラジョー島で漁師をしているお父さん。森が伐採され続けると川の温度が変わってしまい、生息する魚も変化してしまうというお話をしてくれました。その後マナウス港から船で20時間程移動し、パリンチンスという町で三日三晩行われるお祭り“ボイ・ブンバ”を取材しました。

 

島全体で青と赤2チームに分かれ、各チームそれぞれ巨大な山車を操りながら歌や踊りで(リオのカーニバルと並ぶと言われているそう)アマゾン全てへの感謝と五穀豊穣を表現し祈るお祭り。倉庫で製作中のパーツを見た時は随分な素朴さを感じたのに本番、山車の中に灯りがともると立派な迫力にすっかり圧倒されました。

 

過去これまでに仕事とプライベートで訪れた国の数はおよそ36カ国。そうなると「これまで行った国でどこが一番よかったですかー?」と訊ねられることは多く「この人はその流れでパリ留学時代の話を聞きたそうだぞ」と思えば「そうですね、フランスです」という時もあるし、「やっぱりハワイは間違いないですね」とか「台湾は美味しいです」なんて、旅初心者の方を意識したお返事をすることもあるし、「ベネズエラの山奥で出会ったヘニャパ族という裸族の村もなかなか強烈な経験でした」と語ることも(必ず『ヘニャパ族?』と聞き返されます)あるけど、実はどの土地での経験はありがたい時間ばかりで、どこも一番だし一番が決められないからまだ旅を続けているのだと思ったり。

 

gatta4月号を手にとって久しぶりにブラジル、アマゾンのことを思い出しました。船での移動中にはピラニアを釣ったり、シクリン族の成人式に遭遇したり(成人を迎える男子は木に登って蜂の巣を素手ではたき落とすという儀式。みんなの腕は当然刺されて腫れて寝込む子もいたし、その彼らの母親は腕などに自ら傷を作っていたみを共感していたなあ・・)。

 

とはいえこうした個人の記憶は悲しいかな日に日に薄れていくことがあって、どうか消えないようにと繰り返し思い出したり引っ張り出す必要があるのだけど、

 

鶴岡にある貴重なアマゾンの資料や収蔵品が人の手、人の力によって残せるのなら、これからの未来のために、過去を知るためにも残して欲しいなあと願います。

 

「これノリコにあげる!」とマレーシアの奥地に住む原住民の男の子から毒(木の樹脂)付きの吹き矢をもらったのに、引越しの時「これ、都内じゃ使わないよな〜」と処分してしまったことをふとした時に後悔することが個人のレベルでもあったりして、だからこそ本当にそう思うんです。残せるものは残そうと。

 

あ、誰かに使いたいからってわけじゃなく、記憶の記念の為にですよ、念のため。


加藤 紀子

プロフィール:

加藤紀子

92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。

加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/

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