特集の傍流

2017.7.5

飛島、「学び」視点でその魅力に迫る。

2017年8月号(154号)ふしぎの島、飛島。

山形県酒田市飛島

 酒田港から北西へ39キロメートル。日本海に浮かぶ山形県唯一の離島、飛島は、里海・里山の自然と、昔ながらの島の暮らしの原風景がつまった小さな島だ。総面積は2.75平方キロメートルで、この面積は東京ディズニーランドおよそ5.5個分。最標高68メートルのテーブル状の地形で、周囲は10.2km(計算上、成人なら約2時間10分で島を一周できる)、南北の道路距離が約4キロメートルと、散策やサイクリングをするには丁度良い広さの島である。

 

日本海に浮かぶ不思議アイランド、飛島。

 トップ画像は、飛島東部の鼻戸崎展望台から寺島、鳥海山方面を眺めた写真だ。島の周辺は対馬海流の影響で、このように、東北の海とは思えないほど温暖で透明度が高い。貴重なサンゴ類群生地もあり、コブダイやメジナなど南方系の魚も生息する。また、初夏にかけて産卵に訪れるドチザメの群れを観察でき、ダイバー達からも人気を得ている。

 そんな飛島だが、山形県内に住んでいても、島を訪れたことのある人は、いや、もしかすれば山形に離島があることを知らない人もいるのではないだろうか。
 現在は、漁業を中心に宿泊と観光業が営まれている飛島の人口は、2017年6月30日現在で208名。人口減少や高齢化は現在も進んでいるが、島の素晴らしさに魅せられた若者など、様々な層のUIターン者がここ数年増え、新たな生き方に挑んでいる。昨年9月にはジオパークにも認定され、今、まさに熱い視線が注がれている島なのだ。

 

集落の風景。

 

島に着いて最初に出会う、独特の景観とその美しさ。

 飛島は、日本海を南北に連なる海底山脈の頂上に相当する。海底火山から吹き出した噴出物が海底に積み重なり、盛り上がりながら波や風雨に削られて現在の姿となった。そのため、多様な地形が入り組んでおり、少し歩いただけで岩場や海岸線などの景観が、がらりと変わる。
また、北緯39度という高緯度に位置しながら、暖流・対馬海流の恩恵を受けているため、年間平均気温は12度と暖かいうえに積雪も少なく、南と北の動植物が混生する特徴的な生態系を築いている。

 

毎年初夏に一面の黄色い花を咲かせる、固有種のトビシマカンゾウ。高山植物のニッコウキスゲが海浜環境に適応したもので、飛島と佐渡島のみに分布している。昔は島の表面が真っ黄色になるまで茂っていたといい、飛島では海岸近くや断崖など、日当たりのよい場所に群生し、古くから貴重な食料としても親しまれ、酒田市の花に指定されている。

 

飛島特産の「ごどいも」の花。ごどいもの名は、一輪車などに乗せて運んだときや、鍋で蒸かしたり煮たりしたときの「ごどごど」という音が由来といわれる。

 

 このような豊かな自然を目当てに、ウミネコが繁殖に訪れ、渡り鳥が羽を休めに立ち止まり、多くの太公望が訪れる絶好の釣りスポットにもなっている。

 

海釣りに興じる釣り人たち。奥に見えるのは御積島(おしゃくじま)。

 

島を囲むようにして、特徴ある形をした岩や、大小の岩島が点在し、多くの伝説が残されている。

 

生活・文化とともに醸成されてきた島の歴史。

 島には縄文時代前期からの遺跡が存在し、江戸時代には北前船の西廻り航路として、風待ち港や避難港として利用され、海上交易による文化の中継点として重要な役割を果たした。そうした海を生業とする人々によって培われた漁村の生活・文化もまた、島の見所だ。
 海の幸が豊富に獲れる「山形県を代表する純漁村」といわれた島には三つの集落があり、港のある勝浦地区から中村地区を抜けて法木地区まで、一本の道が通っている。家々はその道に沿って海に面して建ち並んでおり、晴れた日には鳥海山を臨める。飛島は鳥海山の山頂が飛んでできたという伝説もあるが、古より島の小物忌神社と鳥海山頂の大物忌神社で「火合わせの神事」(両社で篝火を焚き、その見え方で豊漁・豊作を祈願する神事)が行われてきたように、信仰の対象としても鳥海山の存在は常に側にあった(神事の起源はいまだ不明だが、平安時代に始まったとする説がある)。

 

浅瀬から望む鳥海山。

 

 このように、大地の営みを体感しながら自然に触れることができ、そこに住む人々の生活や文化などの深い関わり合いも、丸ごと楽しむことができる。それがジオパークの魅力であり、飛島がその認定を受けた理由でもある。

 

岩がマンモスのように見えることにお気づきだろうか。飛島の南側海岸はほとんどが岩場で、海岸遊歩道からは、このような〝マンモス岩〟や〝ローソク岩〟などの風景を楽しめる。

 

さらなる視点の広がりを教えてくれる、多様性の島。

 さて、「〝ふしぎの島〟とはいうけれど、飛島の何がそんなに不思議なの?」と思われる方もいるかもしれない。ここで言う不思議とは、多様性という言葉に置き換えることができる。多くの不思議が生まれる、多様性のかたまり、それが飛島なのだ。今回はその飛島が内包する様々なストーリーを見ていこう。少しでも興味が生まれたなら、ぜひ足を運んでみていただきたい。きっと新たな発見が、あなたを迎えてくれるはずだから。

 

島の周囲には、海に洗われてできた海食台や海岸段丘が広がり、古い地層や断層が見られる場所もある。
写真に写っているのは、今回の特集でさまざまなご協力をいただいた、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 主任研究員の岸本誠司さん。

 

(以上、特集冒頭文より)

 

「学び」の視点で飛島の魅力について探る「ふしぎの島、飛島。」
特集のレポートは、発行日より順次更新します。お楽しみに。

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