特集の傍流

2017.10.13

上山のテロワールを、そのまま感じられるワイン造りを。

2017年11月号(157号)やまがたワイン考《前編》
蔵王ウッディファーム 代表取締役 木村義廣さん
山形県上山市

 TOPの写真に写るのは、2013年に県内12番目のワイナリーとして醸造を始めた「蔵王ウッディファーム」の代表取締役にして栽培責任者の木村義廣さん。果実の生産・販売、ドライフルーツなどのくだもの加工品の製造・販売をしてきた同社は、ワイナリーとしては今年で5年目だが、ワイン用ぶどう栽培の実績は40年を超える。

 

自社畑のピノ・ノワールの収穫の様子。


 

 その特色であり強みは、なんといっても自家栽培ぶどう(欧州系ワイン専用種)100パーセントのドメーヌワイン(※ぶどう畑を自ら所有し、その栽培からワインの醸造・瓶詰めまでを一貫して自分たちで行う生産者のワインのこと)。
 代々、上山市にて養蚕などを営んでいた木村社長の実父(先代)が、ぶどうやさくらんぼの生産を開始したのが1952(昭和27)年。その後、木村さんも22歳(1968年)で就農する。古くからぶどうの生産の好適地として着目されてきた上山市において、同社でも大手の国内ワイナリー向けのワイン用ぶどう栽培を1974(昭和49年)年から開始。手間を惜しまず、実のなる量を丁寧に管理して適正まで減らし、単位収穫量を減らすことで品質を高めることに注力してきた。

 

同社では有機肥料100%、除草剤は使わず、化学農薬を削減して生産。特にワイン用ぶどうは、化学農薬を2分の1程度まで削減することで県から特別栽培の認証を受けている。


 

 ワイン用ぶどうの生産を開始し研修会などにも出席、各地のワイナリーを巡るうちに、「自分でもいつか農家らしく、自分で栽培したぶどうだけでワインを造りたいという思いが強くなっていったんです」と木村さん。
 しかし、当時はワイナリーの開業には一定数の人数が必要で、莫大な費用を投資しないと醸造免許が下りない時代。ところが、10年ほど前から行政によるワイン醸造免許の許可方針が変わり、小規模でのワイナリーでも許可されるように。その頃、同社の周辺でも休耕田や耕作放棄地が出始め、ワイナリーを始められる環境が整い始めた。2008年、木村さんはついに積年の夢だったワイナリーの建設を決意することに。

 

園内ショップの扉の側には、フランスではおなじみの「屋根飾り」が記念撮影用に飾られている。これは大石田町在住のフランス人陶芸家、ブルーノ・ピーフル氏の作品で、ローマ・ギリシャ神話における酒(ワイン)の神、バッカスをデザインしたもの。


 

屋根の上に乗るとこのような感じ。


 

 屋根を見てお分かりいただけるとおり、太陽光発電のパネルが取り付けられているが、エコスタイルに取り組むワイナリー建設を考えたのも、「農業主導のワイナリーとして」という理由が大きい。管理や維持に必要な電力を抑え、できるだけ再生可能なエネルギーで、持続可能な農業を営むという考えが根本にある。

 2014年、自社で栽培したぶどうによるワインを初めてリリース。果実農家である栽培のノウハウと、ぶどう果汁へのストレスを軽減するグラヴィティ・フローなどの醸造技術によって定評を得ており、地域食材を活かした料理の提供で有名な「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフにも評価され、東京の店舗でもワインが置かれたり、「いま飲むべき日本ワイン」(2016年11月発売)の中にもラインナップされている。

 

 

 また、上山の風土には「土壌や天候などにマッチし、酸が残り、最も安定的に高い品質を出せる」と、ファームの最主力品種でもあるカベルネ・ソーヴィニヨンが一番適しているとのことで、クラウドファンディングによって新たに苗木が植えられるなど、さらなるファンも広がっているようだ。
 現在、佳景を眺めながら試飲等ができるデッキを増築しているほか、料理との相性を堪能する飲食店とのタイアップも考えているという。
 テロワール(土壌、気候、地形など、その土地が持つ本来の性質)に恵まれた自社畑で、「ブドウへ注がれた蔵王の息吹をそのまま感じられるワイン」を掲げる同社。木村さんは、「今後もファーム&ワイナリーのスタイルを続けながら、豊かさを作っていきたい」と結んでくれた。

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