山形で感じる鬼の気配。地名の鬼「其の壱・百目鬼」

2023年3月号(221号)
特集|鬼さん、こちら
百目鬼温泉(山形市)

人々を癒す温泉があり、古戦場でもある「百目鬼」の謂れとは?

山形市の南西部に位置する「百目鬼(どめき)」の地名は、1623年(元和9)の検地帳に「土耳木」と記されているのが初見だそうで、もともとは谷や川、滝の流れる音“轟(どめ)く”から発祥したと伝わる。加えてここは本沢川の急流地帯であり、水量の音が大変大きく響き渡るため、十よりひと桁多い百の字が充てがわれ、その地の険しさは〝鬼の目〟のように恐ろしいとの意味を込めて「百目鬼」の地名が定着したという説がある。また当地は古くから水田が多く、自分の田んぼに水を多く引こうとする水泥棒をたくさんの人(百の目)が見張る場所だからなど諸説あるが、真相は謎なのだとか。

またここ百目鬼地区一帯は、かつて1600年(慶長5)に起こった「関ヶ原の戦い」の地方戦の中心舞台で、最上義光軍と上杉の重鎮、直江兼続軍による激闘が繰り広げられた「長谷堂合戦」の跡地でもある。いまも周辺に広がる田畑のなかには「主水塚(もんどづか)」「掃部の碑(かもんのひ)」「湯目の碑(ゆめのひ)」など、当地で戦死した両軍の武将や歩兵たちの供養塚が点在し、代々村人たちが供養を続けているのだ。

さらに2001年(平成13)には農業用の地下水を掘っていたところ偶然温泉が湧き出でて、以来「百目鬼温泉」の名で広く親しまれる人気の温泉スポットとなった。疲労回復などに効く源泉掛け流しの薬湯と明媚な風景を望める露天風呂は、県内外から人々が集う癒しと語らいの場になっている。

参考資料:山形新聞社発行「やまがた地名伝説」第1巻、第5巻

「百目鬼温泉」の成分は高濃度の強塩泉のため、3分以上入浴すると湯あたりする場合があるそう。
盆地ならではの山々に囲まれた田園と、山形と宮城にまたがる蔵王連峰の方角から登る日の出が見える。
いまは人気の登山スポットで、かつて古代信仰の対象でもあった富神山を背後に佇む早朝の『百目鬼温泉』
熱い湯の「湯もみ」として早朝5時30分から入湯を許可しており、熱い風呂目当てに常連客が通う。

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