甘い=美味しさの代表。しあわせな気持ち。本能的に求められるエネルギー源。

2023年11月号(229号)
特集|なんて最高な、甘いもの。

甘味好き? 老舗菓子店が多いから?「全国菓子大博覧会」での評価をもとに山形発信の菓子たちが評価される所以を探ります。(上のアイキャッチ画像は『戸田屋正道』の取材にて。山形県初の優秀和菓子職に選ばれた戸田健志さんによる実演のようす)

甘味は脳内で心地よさを感じる部分を刺激する

甘いものは美味しい。一部の辛党からは異論が聞こえてきそうだが、多くの人は頷いてくれるだろう。甘味、塩味、酸味、苦味、うまみの5種類に分類される味覚のなかでも「甘味」は脳内の心地よさを感じる部分を刺激し、β-エンドルフィンというホルモンを分泌させるという。

五感の芸術とも言われる「和菓子」。視覚で楽しみ、味覚でしあわせに。

全国菓子大博覧会で和菓子の最高賞が3つ

そのβ-エンドルフィンは、ストレスを和らげ、心身をリラックスさせる作用や快感をもたらす作用があるホルモンのため、甘いものを食べるとしあわせな気持ちになるのはそうしたホルモンの影響が生じているのだ。

今回の甘味特集は、菓子界のオリンピックと称される「全国菓子大博覧会」の2017年大会において、最高賞(名誉総裁賞)を受賞した菓子が山形県内に4つ※もあるという情報がきっかけとなった。とある取材中に話を伺った某菓子店のご主人が、「山形の人は舌が肥えていると思う。菓子博で京都、石川と並んで山形の和菓子が3つも最高賞を獲った。山形の職人が作る菓子のレベルが高く地元のお客様をしっかり掴んでいるから、たとえ隣県から大手が参入しても定着が難しいのでは」との推察も。そのことを確認するべく調べを進めてみると、山形県はとくに和菓子の世帯購入額が高いことが判明。そんな山形の菓子たちと作り手の声を紹介し、“しあわせ”を共有したいと願っている。

秋の色彩や季節感を表現した上生菓子「紅葉(非売品)」、錦秋、白秋。今号特集のために『長榮堂』より創作いただいた。老舗長榮堂 和菓子職人 小野寺勇孝氏の作。
上生菓子「白秋(非売品)」同じく老舗長榮堂 和菓子職人 小野寺勇孝氏の作。
上生菓子「錦秋(非売品)」同じく老舗長榮堂 和菓子職人 小野寺勇孝氏の作。

和菓子のことや山形との関係性について、老舗の菓子職人に訊きました

和菓子の定義は?

江戸時代までに伝わり日本で進化したものを指し、主に小豆や餅粉、米粉などを原料することが一般的に定義化している。歴史は縄文時代まで遡り、木の実を使った団子状のものが始まりとも。大きく分けて生菓子、半生菓子、干菓子の3つに分類される。

多くの工程を繊細にこなす職人の仕事を間近で見る。素早い手さばきは圧巻(老舗長榮堂にて)

和菓子と洋菓子の違いは?

洋菓子は、西洋を起源とした菓子の総称。起源説は紀元前10世紀頃まで遡る。和菓子は、江戸時代までに製法などが日本に入り、独自に進化を遂げた伝統菓子。
大きく違う点は原材料、作りかた、見た目。和菓子は植物由来の材料が多く、煮る、練るといった手作業中心。洋菓子は動物性の材料が多用されオーブンなどの家電が必要。

取材時にちょうど『老舗長榮堂』の人気商品ともいえる「板かりんとう」を作っていた。ほとんどの工程が手作業。全国菓子博覧会厚生大臣賞受賞のひと品だ。

山形県民に甘党が多い理由は?

よく東北地方の味付けは濃い、といわれますがそれは甘味にも通じます。現代では均一化されつつも、やはり京都の菓子は甘さが控えめです」と語るのは、創業137年の菓子店『老舗 長榮堂』の長谷川社長。全国各地と交流がある5代目は「農業を中心とする山形県民は、昔から重労働や寒さから来る疲れを自然と甘味で癒していたのではないでしょうか」と考察する。

富貴豆で定評のある山形市印役町『老舗長榮堂』の代表取締役社長、長谷川浩一郎さんから山形と和菓子文化についての背景をうかがった。

都道府県(調査都市)別の購入額(世帯あたり)

※総務省統計局「令和2年家計調査」より

和菓子
1. 福島市 11,943円
2. 山形市 11,.396円
3. 岐阜市 11,357円
4. 金沢市 11,035円
5. 福井市 10,791円

洋菓子
1. 宇都宮市 20,672円
2. 富山市 20,289円
3. 大津市 20,065円
4. 青森市 20,011円
5. 京都市 19,788円
17. 山形市 16,573円

なぜ山形は菓子類の購入額が多い?

令和2年度の家計調査において、都道府県別世帯あたりの菓子購入額は和菓子が2位、洋菓子でも17位と比較的高い位置にいる山形県。「購入額が多いということは、それだけ美味しい甘味が揃っているという証拠だと感じます。山形県は北前船の影響で茶道文化が県内各地に伝わり、じつはいまも盛んです。そこで菓子の必然性が高まったことに加え、真面目な菓子職人たちが古くから切磋琢磨して技術を磨きクオリティを高めてきた歴史が絶えず続いているのだと思います」とも。水や空気、食材のおいしさに恵まれた豊かな環境と文化的背景、ものづくりに対する情熱的で実直な県民性が、多くの人の心を掴む甘味を生み出し続けている。

茶道においての菓子は抹茶を引き立て、四季を表現するのに欠かせない存在。

gatta! 2023年11月号
特集|なんて最高な、甘いもの。

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