人が溢れていた通りの賑わいを仕掛け人の熱意で呼び戻す。古くて新しい縁のある町。

2023年7月号(225号)
特集|昭和カルチャー探訪

平成7年7月7日、すばらしいご縁が結ばれて、素敵な出会いがあるようにと名付けられた「昭和縁結び通り」の「昭和ミニ資料館」。この商店街の街づくり事業開始から28年後のいま、“昭和が息づく町”をあらためて歩いて見えたもの。

活気にあふれていた昭和30年代がテーマ

いまから28年前の1995年に、昭和30年代をテーマにした町づくりを提唱し「昭和縁結び通り」「昭和ミニ資料館」を発足させた商店街がある。高畠町で高砂屋珈琲店を営む高橋正人さんは、その中心を担って来た人物だ。「きっかけは1992年(平成4)のべにばな国体なんです」

「べにばな国体の年に各地で盛り上がった“花いっぱい運動”をきっかけに、中央通り商店街という名称であったこの通りで3つに分かれていた商店街(幸町中央通り・中央通り・東中央通り)がひとつにまとまりました。そこから商店街発信で町を元気にしたい、それには仕掛けが必要だと考えたんです」と高橋さん。そこで思いついたのが、かつてこの通りに3つあった映画館の資料を活用することだったという。

「嵐を呼ぶ男」の看板が目印となる高砂屋珈琲店(昭和参号館)は映画館のエントランスを模している。
昭和に活躍した映画スターたちのポスターなどが所狭しと展示されている高砂屋珈琲店の店内。
珈琲店のカウンターは町内外から来る常連さんで賑わっていた。
濃厚な味わいで名物となっている高砂屋珈琲店の名物、ナポリタン。炭火珈琲とサラダが付いて1,200円

昭和30年代の活気を商店街に投影

「この通りが一番活気に満ち溢れていたのは昭和30年代。映画は最高の娯楽でした。その時代を再現し、我々には懐かしく若者には新しい文化を伝えていけたら」と商店街メンバーに働きかけ、最初は3店舗の有志で「昭和ミニ資料館」を始めることに。そうしたユニークな活動が話題となり、多い時は20箇所以上の加盟店が昭和資料を展示するまでに成長した。

高砂屋珈琲店と隣接する杵屋 高砂屋菓子店の店主である高橋正人さん。
現在の昭和縁結び通り沿いにある「まほろば合同タクシー」方面から見た昭和30年代の風景。写真は「おばこや」に展示。

映画資料を譲り受けた高橋さんの店先には、もぎり場が再現展示され、往年の喫茶メニューとともに総天然色の時代感溢れる映画ポスターを堪能することができるスポットに。
 さらに高橋さんは今年で12回の開催を数える「クラシックカーレビューin高畠」のイベンターというもうひとつの顔を持っている。これも昭和をテーマにした商店街活動が縁で始めたイベントで、4年ぶりに開催された昨年は、200台以上のクラシックカーが集結し大変好評を博したそう。

全国から旧車ファンが集う、2年に1度の祭典クラシックカーレビューin高畠。食の屋台や催事もあり大いに賑わう。
第1回「クラシックカーレビュー・イン高畠」のパンフレット。

28年前も、昭和の暮らしや文化が懐かしく思えました。いまは平成、令和と時代が2つ変わりましたが、それでも昭和には躍動感というか、面白がれる要素が散らばっているように思うんです」と魅力を語ってくれた高橋さん。高橋さん案内のもと通りを歩き各店を訪ねると「このブリキは◯◯でね、このショーケースも年代物の希少品なのよ」などのエピソードトークに事欠かない。時間を忘れて話したくなる、人の温かさに触れることができる町、それが昭和縁結び通りの最大の魅力だ。

街のランドマークとなる山形交通高畠線の旧高畠駅。地元で採れた凝灰岩「高畠石」を主構造材としている。
向かいの化粧品店「ちょうさん」が展示を管理する「昭和五号館」
「昭和五号舘」内では、昭和30年代の平均的な暮らしを再現。
杵屋 高砂屋菓子店。杵屋の菓子はもちろん、「おしどりミルクケーキ」のコーナーなど地域性にあふれている。
杵屋 高砂屋菓子店。置賜でつくられた各メーカー和洋菓子を取り扱う。
味自慢の手づくりだんご屋で、あんびん(大福)が名物の「おばこや(昭和十七号館)」の女将さんに商店街の歴史を伺った。
「おばこや」に展示されている、昭和30年代のブリキのおもちゃ。
村上茶舗(昭和十六号館)に展示されている長嶋茂雄のサイン入り大下駄。
村上茶舗の目前には「大日如来石仏」が鎮座しており、銘茶だけでなく奉納用の草履も揃う。
「弁天様」と呼ばれ親しまれている「厳島神社」は、歌舞、弁才、財福の神様として地域の人々の信仰を集めている。
手打ちそばの伊澤(昭和弐号館)女将の伊澤まきこさんは、高畠高等学校在学中の1964年(昭和39)に東京オリンピック陸上短距離200mに出場した経歴をもつ。
1964年の東京オリンピック開会式に着用した日本選手団ユニフォーム(伊澤)
1964年の東京オリンピック当時の資料や記念品が展示されており、伊澤さんを慕う多くのアスリートが来店している(伊澤)
大日如来石仏。足を丈夫にする仏様といわれており、たくさんの下駄や草履が奉納されている。
大日如来鞘堂には長さ4メートルもある大わらじが奉納されている。

gatta! 2023年7月号
特集|昭和カルチャー探訪

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