表紙の小さな物語

2016.7.16

たくさんの愛と思いやりを受けて育った、山形の思い出。

2016年8月号(142号)表紙

芝生に寝転がってうたたねをする人、ベンチに座りアイスティーを飲みながら談笑する人。山形市街を一望できる「悠創の丘」の上で、ゆるやかな週末の午後を過ごす人たち。そのなかひときわ朗らかに遊んでいた女の子が、お母さんやおばあちゃんと一緒に幼い頃からこの丘によく遊びに来るという、渡部あづささん(10歳)。快晴の空一面がブルーからオレンジへ、鮮やかなグラデーションにスプレーされた初夏の夕刻、軽やかにかけまわる足音はまだまだ途切れそうにない。

 

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ふれて遊びながら、自然に草木の名前や特徴を知っていく。

 

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勝手知ったる森のなかを自由気ままに。待っててもらい、追いつくのがやっと。

 

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「この枝は大丈夫かな?」木と相談しながら、得意の木登り。

 

竹林や落葉樹がそのまま残されている里山に切開かれた公園は、もともとある折節の自然と触れ合える場所であり、あづささんにとっては絶好の遊び場。とくに遊具などなくても、そこにあるものを使って自分で考え工夫しながら遊ぶのが好きなのだそう。「あそんでいるうちにわかるようになったし、できるようになったよ」。草木の特徴や名前もよく知っているし、木登りも驚くほど上手だ。それはまるで、自然そのものが遊び相手であり先生であるかのよう。お母さんのいづみさんと二人並んで、林で拾った棒切れ片手に草木の名前をあれこれ口ずさみながら散策路を闊歩。白い花を咲かせたヤマボウシや青い実をたくわえたオニグルミがそよ風に揺れ、二人になにか囁いているかのようにも見えた。

 

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親子で四つ葉のクローバーさがし。「わたし、四つ葉ハンター!」というだけあって、見つけるのが早い、あづささん。

 

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「エイッ!」拾ってきた棒切れで、ちゃんばら。お母さん、ちょっとだけ本気で応戦。

 

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「さーて、もんだい!これは何を表してるでしょうか!」「あづさのA!(一同笑顔で返答)」

 

悠創の丘を降りてすぐ、西蔵王のふもとに在る東北芸術工科大学へ。学内にある「こども芸術大学」は、あづささんが小学校に入るまで通った母校だ。大学生たちが創作に勤しんでいる近くで、アトリエの廃材を使った創作やままごと、ボール遊び、虫探しなど、自由に遊びを生み出しながら幼い子供たちが悠々と遊びまわっている。渡部さん親子も、思い出が詰まっている大好きな芸工大のキャンパスヤードで、“いつものように”笑いながら転がりながら日が暮れるまで遊びまわる。遊び疲れて「ほへ〜っ」っと横たわった芝生を、強く射し込む夕陽が黄金に染めた一瞬が、今号の表紙となった。

 

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小山を駆けまわるなか、芸工大キャンパスヤードの祠にもお参り。

 

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いつでも、どこでも、遊び相手になってくれた山形の自然。

 

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大山桜の下で。梅雨入り前後にしては珍しく、燃えるような夕陽だった。

 

そしてこの夏、渡部さん一家は仕事の転勤で10年間暮らした山形をしばらく離れることになるという。「山形では、いろんな催事や集いに親子で参加したことで、たくさんの人との出会いや思い出があります。皆さんのたくさんの愛と思いやりを受けて10年間、育てていただきました。誌面から私たち家族の感謝の気持ち伝わればいいなと思っています」とは、お母さんのいづみさん。新しい土地に引っ越していろいろな不安はあるかもしれないけれど、大丈夫。その明朗さと好奇心があれば、きっとこれからも素敵な出会いや出来事が待っているはずだから。

 

2016年8月号(142号)やまがたのなつごおり
表紙モデル:渡部あづささん(10歳)
山形県山形市上桜田(東北芸術工科大学)

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