特集の傍流

2022.5.11

4代目の職人が製造のすべてを担う「冨貴豆」の専門店。

2022年6月号(212号)ふうき豆に迫る。
代表:中村弘久さん
山形県山形市

 「繁忙期は冬のお歳暮シーズン。年が明けると徐々に落ち着いてくるね」そう話すのはまめやの4代目を受け継ぐ中村弘久さん。唯一の職人として日々厨房に立つ。「難しいのは水加減と火加減」というだけあって、豆の状態によって配分を変えたり、羽釜と向き合いながら何段階もの調整が必要だという。豆を戻して茹でて、味付けする。仕上げに蒸らして冷めたら完成。ざっくりとした工程はこの通りだが、40年携わった中村さんにしか見極められない加減が商品の味を左右する。
 初代の店は山形銀行旧本店の南向かい、旭銀座にあった。そこから本町の目抜き通りへ移転し、さらに2005年(平成17)からは旅籠町の現店舗で営業を続けている。

 

『まめや』の「冨貴豆」。賞味期限は常温で夏季なら2日、冬季は5日。

 

昔ながらの羽釜を使い、炊き上げていく。

 

皮を剥いた青えんどう豆をさらに水で洗って仕上げる。

 

砂糖を何回かに分けて入れ、さらに吹きこぼしながら炊いていく。

 

工程ごとに羽釜を見張り、手際よく作業を進めていく中村代表。注文量によって変わるそうだが、取材した日は朝6時には厨房に入ったとのこと。

 

代々職人が受け継いできた変わらぬ味。基本的に作り置きはせず、その日作った分のみを売る。

 

ほくほく、とろりと絶妙な塩梅に炊き上がった。粗熱をとり、丁寧にほぐしていく。

 

店頭では275g箱入690円〜購入できるほか、発送も可能。

 

土日や冬の繁忙期など、確実に手に入れたい場合は事前の電話予約がおすすめ。

 

創業は明治末期、髪結い店のもてなし菓子

じつは、まめやの前身は髪結い屋だったそう。順番待ちの客へのお茶うけとして出していたのが“ふき豆”で、それが評判となり創業した歴史がある。「当時からうちでは“ふき豆”と呼んでいるからそれを守っている」という中村さん。時を経ても変わらず人々に支持される味は、褪せない職人魂によって守られている。

 

山形県出身の洋画家、故・丹野良雄氏の作による「まめや」の旧店舗。

 

毎日待っている人がいる郷土菓子

 取材中、羽釜から取り出したばかりの冨貴豆をいただいた。「底にくっついていた一番甘いとこだよ」と湯気が立ったものを差し出してくれた中村さん。とろっと崩れそうになる冨貴豆をスプーンで掬って頬張ると、艶のある甘みが最初に広がり、飲み込んだ瞬間にほんのり塩気が顔を出してくる。そして豆の旨味がしばらく口のなかに残る贅沢な時間が広がった。
 広げた富貴豆の粗熱が取れると、この日一番に仕上がったものが店頭へと運ばれ手際よく箱詰めされていく。100年来繰り返されてきた朝は今日も粛々と繰り返されている。

 

店で売られるものとはまた一味違った出来立ての味。甘みがより一層際立っている。

 

 

まめや)山形県山形市旅籠町1-5-11
営業時間 / 9:30〜18:00(木曜定休※祝日を除く)
TEL / 023-623-0554
https://www.fukimame-mameya.com

2022年6月号(212号)
ふうき豆に迫る。

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