特集の傍流

2016.6.6

太古の神秘が漂う最上峡、スギ群生地と湧水の滝。

2016年7月号(141号)いざ、癒しの地へ。
最上峡案内人協会 会長 佐藤稔さん
最上郡戸沢村古口

スギの大樹といえば屋久島を思い浮かべるひとも多いだろう。日本のスギは生育地によって「裏スギ」と「表スギ」とに分類されるが、屋久島の屋久杉は「表スギ」といわれる太平洋型。それに対して、戸沢村にある「幻想の森」は、「裏スギ」といわれる日本海型の土湯スギ、または山ノ内スギと呼ばれるもの。「裏スギ」は、葉が垂れるように下向きについているのが特徴で、垂れ下がった枝が地面に触れると、そこから根を下ろし、新芽を出し、独立した樹に成長する。根の張りが良く、生命力が旺盛なスギであるため、屋久杉とはまた違った景観を我々に見せてくれるのだ。

 

「幻想の森」の名にふさわしい、訪れる者を引き込むその姿。

「裏スギの群生地としては、京都や秋田が有名ですが、戸沢村の土湯スギ群生地も、日本有数のものなんです」と、話してくれたのは、最上峡案内人協会会長の佐藤稔さん。樹回りが10メートル以上もある巨木が群生し、根元から複数の樹に分かれた枝が天に向かって伸びる、その神秘的で幻想的な姿は、映像の舞台としても日本中に届いている。JR東日本の「大人の休日倶楽部」のCMは、「幻想の森」を一躍注目のスポットにのし上げた。また、「十三人の刺客」(2010年)、「超高速!参勤交代」(2014年)など、映画のロケ地としても使われている。そういわれてみれば、と思い出したひともいるのではないだろうか。

 

この群生地が発見されたのは平成10年ということで比較的新しく、屋久島ほどの知名度が無いのは致し方ないが、勝るとも劣らない景勝地であることに違いはない。「パワーを貰おうとしてくる方々も多く、特に女性はよく来られます」と佐藤さんは話す。最近では、わざわざ遠方から巨木を見に来る人も増えており、一回訪れるともう一度訪れたくなる人が多く、リピーターも増えているとのこと。わざわざ遠出をしなくても、身近なところにこんなすばらしいパワースポットがあることを、県人として誇りに思いたい。

 

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朝霧の中の「幻想の森」。佐藤さんいわく、巨木を見るなら朝か雨上がりがお薦めとのこと。

 

古くから文学作品にも登場する、最上峡の新しい魅力。

戸沢村草薙温泉の対岸にある「白糸の滝」は、落差が124メートルあり、全国6位の落差を誇る。日本の滝百選に入る景勝地だが、流れ落ちる水が全て湧水だということはあまり知られていないところ。佐藤さんは滝を仰ぎ見ながら、「自分が小さいときは、滝の上の方まで登って行って、ここでよく遊んだり、滝の水を飲んだりしたものです」と話す。

 

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滝の麓に立つ佐藤さん。上流から流れてきた水が幾筋もの細い流れとなって下るさまは、まさに白糸が流れ落ちているよう。

 

「白糸の滝」の名をつけた人は不明だが、平安時代には既に句に詠まれており、史伝物語「義経記」にも、その名が登場している。兄である頼朝から追われた源義経は、北国路を北に進み平泉に逃れたといわれるが、途中一行は、舟に乗り最上川をさかのぼったという。その際、義経の正室である北の方が「最上川 瀬々の岩波堰き止めよ 寄らでぞ通る白糸の滝」などの和歌を詠んだと言い伝えられている。義経たちは、どんな思いでこの景観を横目に通り過ぎたのだろう。

 

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不動堂の鳥居から、最上川を挟んで対岸を臨んだ風景。

 

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国道47号から眺める景観はお馴染みだが、2015年12月から、最上川舟下りの新航路開設により、対岸に上陸して滝の麓を散策できるようになった。滝の麓には赤い鳥居が印象的な、不動明王の祀られた不動堂があり、樹々の緑や流れ落ちる水の白とのコントラストが目に鮮やかだ。遠目でしか見られなかった滝を、眼前で見上げれば違う表情が楽しめるというもの。最上峡の新たな魅力を、その目で確かめに行ってみよう。

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