特集の傍流

2016.11.9

建設に興味があるんですが、実際の現場ってどうですか?

2016年12月号(146号)山形の“道”を拓く。
柿﨑赳さん(株式会社新庄砕石工業所)、平間菜穂子さん(山形建設株式会社)
横山渓太さん(山形工業高校)、斎藤海智夏さん(山形工業高校)
山形県立山形工業高等学校(山形市)

近年は、多発する自然災害からの復旧、テレビのリフォーム番組や、アイドルによる土木作業等を取り上げる番組などの影響もあり、建設業に興味を持つ若者も増えている。とはいうものの、建設業就業者数は年々減り続け、人手不足の状況が続いており、特に若年従事者の確保育成が喫緊の課題となっていることには変わらない。この状況を受け、県では来春、山形県立産業技術短期大学校に「土木エンジニアリング科」を新設し、技術者の育成に力を注ぐ対策を取っている。

 

しかしながら、若年層も含め、業界の人間ではない我々にとって、実際に建設業界を知ることができる機会というのは少ない。今回『gatta!』では、実際に建設業に従事する方2名と、建設業界に興味を持つ高校生2名を誌上に招いて、質問座談会を試みた。
登場いただいたのは、(株)新庄砕石工業所の柿﨑赳(たけし)さん、山形建設(株)の平間菜穂子さんと、建築に興味があるという、山形県立山形工業高校2年生の横山渓太さん、土木に興味のある、同校1年生の斎藤海智夏(みちな)さんだ。

 

左から、平間菜穂子さん、柿﨑赳さん、斎藤海智夏さん、横山渓太さん。今年5月に新校舎が完成した、山形工業高校の大視聴覚室にて。

 

階段型教室で、県産木材にこだわった、温かみを感じる空間だ。

談話をはさみながら校内を見学。学生の2人は、緊張しながらも積極的に質問をぶつけていた。

 

人が足りない中、学ぶことが多い建設業は、若手にはチャンスなんです。

我々の暮らしを支えるために、なくてはならない建設業。建設業は「土木」と「建築」の二つに大きく分かれ、「土木」は道路や橋、堤防やダムといった社会資本(インフラ)を、「建築」は住宅や工場、学校といった建物を、建設し、維持していく。また、災害時のパトロールや復旧、冬季の除雪など、「地域を守る」のも建設業の仕事。建物の更新や長寿命化、地域維持活動など、建設業へのニーズはますます多様化している。

 

 

横山さん)早速ですが、仕事にやりがいを感じるのはどのような時ですか?

 

平間さん)完成したときが、やっぱり「やりきった」という思いが強いですね。

 

柿﨑さん)そうですね。建設業というのは本質的に言えば、「ものづくり」。だから完成したときが魅力的。これはもう普遍的なことで、元総理大臣の田中角栄さんが言うには、建設は「地球の彫刻家」だと。
その建設会社は、圧倒的に人が少ない。そういう現状の中で、仕事って全部大変なんだけど、何を基準に仕事を選ぶかって言った時に、「必要とされている仕事」っていうのは魅力的だと思いますよ。建設会社は今、残念ながら人が少ないから、みんなの若い力を欲してる。「必要とされているかどうか」。こういうのが仕事をしていく上で、魅力的でやりがいを感じられる部分でもあるんじゃないかと。

 

柿﨑赳さん (株)新庄砕石工業所取締役管理部長。管理者として、現場の安全を守る仕事を担っている。

柿﨑赳さん (株)新庄砕石工業所取締役管理部長。管理者として、現場の安全を守る仕事を担っている。

 

横山さん)ありがとうございます。

 

斎藤さん)平間さんに質問なんですが、女性だからこそ活躍できたなという場面や出来事はありましたか?

 

平間さん)建築的な話になってしまうんですが、コンクリートを割って中の仕上げをしたときに、男性が見る目線と女性が見る目線の違いで、細かく気づけたっていうのが大きいかな。

 

斎藤さん)なるほど。

 

平間さん)視線が低いものも見えたり、そういう違いはあるかなって。

 

斎藤さん)ありがとうございます。

 

横山さん)同じく平間さんに。今の山形の建築界について、どう思いますか?

 

平間さん)私の会社で言えばなんですけど、やっぱり若い人が少ないのかなという実感があるのと、職人もなんですけど、年上の方がいっぱいいて、20代とか若く力になる人たちが少なく、仕事も進んでいかないところもあるので。さっきも(柿﨑さんが)おっしゃっていたように、若い人の力を集めないといけないなと思います。

 

横山さん)ありがとうございます。

 

斎藤さん)お二人になんですけど、現場の作業員の方々の上に立つ立場になったときに、その作業員の方々に認めてもらうために、どのような努力をされましたか?

 

平間さん)とりあえず私はまだまだ若手なので、頑張るしかないかなって。

 

柿﨑さん)ええー・・・!?(笑)

 

平間さん)単純なんですけど(笑)、本当に、分からないことは分からないままにしておかない。信用が無くなるので。もう、分からないなら分からないなりに調べる、上司に質問する、職人さんに訊きにいくというのを積み重ねて、うまくコミュニケーションを取る。
取らないと、信用も何もないし、上に立ったときに作業員の方々がついてきてくれなくなってしまうと思いますしね。口だけだと。やっぱり、一緒に悩んだりして作り上げるからついてきてくれるっていうのもあるので、そこは大切にしています。

 

平間菜穂子さん 山形建設(株)工務本部建築部建築課。二級建築士。山形工業高校の改築工事では、現場管理を担当。

平間菜穂子さん 山形建設(株)工務本部建築部建築課。山形工業高校の改築工事では、現場管理を担当。

 

柿﨑さん)素晴らしいですね、平間さん。僕、今のそのままそっくり言いたかったくらい(笑)。本当にそうなんですけど、素直になること。素直に人にものを訊く、人の真似ができるっていうのは、優秀な証拠です。変にプライドが高いと真似をしたがらなかったり、訊くことをおろそかにしてしまったりと、自分なりの動きをしてしまって、大変な失敗をする。失敗から学べることも多いけれど、無駄も多い。だから優秀な技術屋っていうのは、ある意味素直で、すぐ訊く。
ただ、なんでもかんでも質問したら「そんなことも自分で考えられないの」ってなってしまうから、一生懸命勉強をして、そのことに対して驕らず素直に「自分は若いんだから」っていること。建設業は平均年齢も高いからね。僕は23歳から建設業を始めたけれど、僕が会社に入って3、4年で覚えたことなんてみんな知ってる。僕の入社当時、一番年上の人は73歳で、じゃあその人は建設で今までどんな仕事してましたかって言ったら、嘘か本当か分かんないですけど、その人が言うには、真室川町に空港があって、戦時中に「俺はあそこを作った」って。とにかく、そういう人がいっぱいいるわけだ。
そんな中、自分の考えを、いくら立場的に上だからって押し通そうとしてもなかなか受け入れてくれない。経験産業だから、建設業って。やらなきゃ分からないんです。だから、素直になることです。あとは、一生懸命勉強することだと思います。

 

斎藤さん)ありがとうございます。

 

(左)横山渓太さん 山形工業高校建築システム科2年生。地元の土地開発で、建物が間近で立つ光景を見て「楽しそう」「どのように造っているのだろう」と建築に興味を持ち、同校に入学。 (右)斎藤海智夏さん 山形工業高校環境システム科1年生。土木作業関係のテレビ番組を見て、土木に興味を持った。夢は発展途上国で青年海外協力隊として、土木分野で活躍すること。

横山さん(左)は、地元の土地開発を見て「楽しそう」「どのように造っているのだろう」と建築に興味を持ち、同校に入学。斎藤さん(右)は、土木作業のテレビ番組を見て興味を持ったという。夢は発展途上国の土木分野で働くこと。

 

横山さん)お二人になんですが、高校卒業後に就職したのと、大学卒業後に就職した場合の収入の差や、仕事の内容に差はありますか?

 

平間さん)収入の差は、ありますね。でも仕事の内容というと、大学を卒業していても、実践と勉強は違いますし、仕事はやはり一から学ばなきゃいけないので、そこは変わらないと私は思います。

 

横山さん)ありがとうございます。

 

柿﨑さん)収入の差はあると思うんですけど、地域によってはものすごくインフレしているし、あまりにも時給アップが激しい。あとは、1年経てばこれだけ上げる、とかね。だから大卒のほうが最初は高いけど、高卒と大卒の人が同じ年齢になったとき、多分高卒の人の方が、大卒の人より高い。
それで、今後の給料の上がり方はどうかと言ったら、建設会社は能力のある人にお金を払うしかない。もう、完全実力主義ですね。人も少ないし、あと10年経ったらかなりの人数がいなくなってしまうから、そんな中で、決まりきった給料の上げ方をしていたら優秀な人は不満を持ちますし、そういう(定例的な)やり方は定着しないと僕は思います。だとしたら給料の上がり方はばらばらになりますね。例を挙げれば、資格試験を受けて合格した人と、しなかった人でも、やはり差はつけます。だから、給与は本人の情熱次第じゃないかな。
ただ、会社の人間として言えば、来年の春に産技短(※山形県立産業技術短期大学校)に、土木エンジニアリング科ができるというけど、そういうのも入ってもらいたいとは思ってます。なぜかと言ったら、一つはまず、土木のことについてよりよく、深く分かってもらいたいのが一点。あとは、2年くらい土木の勉強をして、バイトでもしながら、ある程度自由な時間を経験して勉学を修めてくるのと、高卒でいきなりパッと仕事することになって「さあ現場もってみろ」なんていうのは、全然精神的な負担が違うよね。だから個人的に言えば産技短、行ってもらいたいね。まあ大学でもいいけれど、産技短のほうが2年ですむし、もし早く働きたいとかいうんであれば、そっちの方がいいと思う。
ということで、給与は自分次第。自分の努力次第ということで。

 

横山さん)ありがとうございます。

 

斎藤さん)あの、建設業って朝早かったり、夜遅かったりするじゃないですか。その中で仕事と子育ての両立っていうのは難しいなと思うことはありますか? 大変だったなと思うところは。

 

柿﨑さん)それは建設会社だけじゃなくてみんな大変だよね(笑)。子育て自体が大変だし、全産業的に若手が不足している。その中で、先輩たちと接する機会もすごく多いし、多分どの仕事をしたとしても、若手の一生懸命な期間って長い。そういう時期に、さらに子育てをしていかないといけない。大変じゃないわけがないんだよね(笑)。
子育て論を言えば、今、景気が悪すぎる。出生率は1.4だし、これを2にしようっていうのはもう無謀ですよ。でも景気が上がれば、やっぱり子どもがほしいなっていう人は多い。今でも子どもがほしいなって思っている人はもちろんいますけど、やっぱり、お金がないからやめておこうとか、二人目はいいけど三人目はちょっとやめておこうとか、そういうことになってしまうわけですね。
我々建設会社というのは、まあ民間の場合もあるけれど、大枠は、お国が給料を決める。毎年、労務単価をね。その労務単価が上がって、平均年収以上にならないと多分、建設会社は今後、魅力的なものにはならないんじゃないかな。
今、発注者の方や山形県の方、国交相の方、あと協会も、給与を上げようと頑張っている。上がりさえすれば、暮らしも豊かになって、家庭もうまくいくんじゃないかなと思います。

 

斎藤さん)ありがとうございます。

 

横山さん)平間さんに質問なんですが、2020年に東京オリンピックがありますけど、山形建設への影響などはどうですか?

 

平間さん)そうですね、資材の高騰とか(笑)。職人が取られてしまうんじゃないかっていうのはあると思います。現に今、天童、上山、山形で各所、結構大きな工事があるので、鉄筋屋さんが足りないとか、型枠屋さんが足りない状況で、さらに東京にとられるのかなという不安はあると思いますね。

 

横山さん)ありがとうございます。

 

山形工業高校1階の実習室にて。高校生にとっては業界だけでなく、従業者が自分たち若年層へ向ける想いを知ることができた時間だったことだろう。

山形工業高校1階の実習室にて。高校生にとっては業界だけでなく、従業者が自分たち若年層へ向ける想いを知ることができた時間だったことだろう。

 

横山さん)お二人に質問なんですが、仕事で危険なこともあると思うんですけど、一番気をつけていることはどんなことですか?

 

平間さん)私は新入社員のときに、バックホー(※油圧ショベルのうち、バケットが操縦者側に取り付けられているもの)の死角に入ってしまって、旋回するときにぶつかりそうになった経験があったので、やはりオペレーターの方との合図とか、あとは上下作業の時に、足場だと下の人がいるかいないかとか、そういうのを確認することに気をつけています。

 

柿﨑さん)そうですね。今の若い子はあまり、自分が怪我をするとか思ってない人が多い風に感じます。そんな中で、まず僕は、怪我をしたときのリスクをいつも説明しています。
まず我々は、公共工事で怪我をしたら指名停止になる。みんなご飯が食べられなくなる。そして労災。もちろん、怪我した本人と本人の家族が一番悲しむ。でも、全員に迷惑がかかってしまうし、怪我っていいことひとつもない。だから絶対避けたいことなんです。
基本的にみんなに言っているのは、「自分が怪我しないことを徹底していれば、誰も怪我しない」ということ。でもやはり人は作業をしているとき、目の前の仕事に没頭して、周りが見えなくなってしまう部分も多いから、そこはきちんと見なくてはいけない。我々管理者は、一歩下がった目線で見ることが重要だと思いますね。
また、事故が起きたときにどういう影響が起きるのか考えさせることも重要だと思います。僕の場合は、石橋を叩いて叩いて渡ってもらうっていう。ただ、渡らせるときに十分な安全確保を考えて、安全管理として、こういうことをすると明確にして渡ってもらっています。

 

斎藤さん)もし工事中とか建設中に、東日本大震災のような大きな地震や災害が起きてしまったら、どう対応するんですか?

 

柿﨑さん)難しい話になる場合も多々ありますが、まずは自分の現場にいる人の安全確認、二次災害の恐れがないかの検討・対策をして、発注者さんに相談します。その後、もし東日本大震災のレベルでしたら、既存の工事はすべてストップして、持ちうる建設リソースはすべて災害復旧に回さなければいけなくなると思います。
あの時(東日本大震災時)は、全国からたくさんの人々が集まりました。本来であれば東北に十分量の建設会社があって、復旧だって東北(の会社のみ)でできたかもしれない。でも、できなかった。
それは震災が起こる前から、15年くらい前からずっと建設会社が減っていたから。なかなか日本の景気が不透明で、公共事業が減ってしまって、そうすると「ああ、今のうちにやめておこう」って、建設会社をやめてしまう人たちがたくさんいた。
日本は地震大国なので、こんな時、地域に根付いた建設会社が力を発揮するんです。他県から応援に来てくれる企業は、資材や燃料の確保、地理的条件など、分からない事だらけなので、こういった観点からも、地域には一定数の建設会社と建設従事者を確保すべく、官民一体となって協力し合わないといけないと思いますね。

 

それぞれの興味津々な質問に、答える側も熱が入る。

それぞれの興味津々な質問に、答える側も熱が入る。

 

今、建設業界で働く人が、未来を担う若手に向けて伝えたいこと。

平間さん)先程も言いましたが、やっぱり若い人が増えると、現場にいる人も嬉しくなるので、ぜひ入ってもらいたいなって。女性の方も。結構、(女性技術者は)山形にもたくさんいらっしゃるので、入りやすくなっていると思います。

 

柿﨑さん)そうですね、圧倒的に人が足りない中で、ものすごい受給ギャップもあって、給料も高い水準になりつつあるので、チャンスだと思います。自分の意見を通したり、現場で自分の色を出したりするのもチャンスだと思いますね。さっき、建設業界は経験産業だと言いましたが、学ぶことさえできれば、その後、自分の色を現場で出すというのは結構やりやすいかなと。
その中で、女性土木技術者に関して言えば、今現場は男ばかりなので、その男目線に染まるのではなくて、女性ならではの目線で……99対1だったら、1の方が目立てるし、活躍しやすいと思います。それを抜きにしても、若手が少なすぎて、若手というだけで重宝されますし。
だから僕から、土木を目指す彼女(斎藤さん)に言いたいのは、土木業界に入ったからといって、男っぽくなってほしくはない。それこそ、自分で、自分が見いだせる武器を、その女の子っていう観点から見出して、現場で活躍して、評価を得て貰ってほしいですね。

 

平間さん)そうですね。仕事をしていて、辛いなって思うことの方が多いとは思うんですけど、建築業にかかわらずなので、そこは踏ん張らないといけないかと(笑)。あと、この業界に入るとやっぱり学ぶことが多いので、ステップアップできるというか、どんどん吸収していく業界なので、やっぱり自分から勉強して頑張ってほしいなと思います。

 

柿﨑さん)仕事ってなんでも大変ですし、ここにいる全員が大変だから(笑)。全員、悩みを抱えて、一生懸命仕事をしている。君たちが大人になるとまた違う話もできるかもしれないね。

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