特集の傍流

2018.11.12

築60年以上の雰囲気を生かしながら、プラスアルファの魅力を。

2018年12月号(170号)YAMAGATA COZY STYLE 2018
井上貴詞建築設計事務所 井上貴詞さん
山形県山形市

 以前の外観イメージを残しつつも、愛らしいアイテムが並ぶ雑貨店に生まれ変わったのが、山形市七日町にある『まちの雑貨屋 chotto futto -Home-(チョットフット・ホーム)』。店主の多田祐子さんが営んでいたネットショップの「雑貨屋 chotto futto」の実店舗としてオープンさせたお店であり、お父様が開いていた耳鼻咽喉科の建物をリノベーションしたもの。

 

戦前から開業し、2代にわたって続いた耳鼻咽喉科「多田医院」。2階には入院施設も備え、2015年7月に閉院するまで地域の健康を見守ってきた。モダンな外観の建物も印象的。

 

店内にはインテリア小物や季節の雑貨、器、ステーショナリー、アクセサリーなどの大小様々な商品が並ぶ。

 

長年続いた医院に、新しい息吹を吹き込んで。

 きっかけは多田さんが、七日町で開催していたリノベーションセミナーに参加したこと。リノベーションを手掛けた井上貴詞さんはこのセミナーの講師を務めており、「この建物を活かすことができないか」と相談を受けたという。

 

井上貴詞さん/一級建築士。東北大学大学院工学研究科博士課程前期修了。2014年に独立。

 

「多田さん自身も幼い頃から出入りして愛着をお持ちだったのと、それ以上にお父様が医院に対しての思い入れも深く、できるだけ残す方法を探っていらしたようです。ちょうどその頃、多田さんもオンラインストアの実店舗を持つことを考えていた時期で、この建物をどうしようかとご家族で話し合ったときに、雑貨店の実店舗に利用するという結論に至ったそうです」と井上さん。
 井上さん自身も実際に物件に足を運び、築60年以上の建物のよさを生かし、この建物が持つあらたな魅力を引き出したいという思いを強くしたそう。

 

愛着のあるものを生かせるのが、リノベーションの魅力。

 多田さんの意向もあり、「使えるものはできるだけ使う」ことを大切にしたという。医院時代に2階で使われていた引き戸は入口のドアに、医院時代の受付カウンターはレジに。診察室、処置室など、当時のものをそのまま残し、商品を展示する陳列棚などの什器も、元はカルテを入れていた棚、下足箱、木箱、机などで、ほとんどが医院内や実家で使われていたもの。当時の名残を残すものたちが現店舗にも違和感なくなじむ。

 

多田さん。店内の商品に囲まれながら。

 

「経年による趣や味わいは新品には出せないもの。あらたな愛着が湧くようなお手伝いができればと思っています」と井上さんは語る。
 医院の建物をできるだけ活かす形でのリノベーションに、お父様もご満足されているとか。
 長らく耳鼻咽喉科医院として地域の人たちに愛されてきた場所が、雑貨店としてまた別の形で地域の人達に愛されていく。店名の由来でもある「ちょっと笑顔に、ふっとやさしくなれる」というコンセプトで多田さんが集めた雑貨たちも、この空間を楽しんでいるようだ。

 

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