特集の傍流
それはまるで「傘」の文字のように、人がぎゅうっと寄り添える場所へ。
caruru 岡田涼さん
山形県山形市
旧松坂屋現ナナ・ビーンズ北側の一角に、長らく洋傘専門店があったことを記憶している人も多いだろう。街の顔として当たり前に溶け込んでいた店が、ひっそりとその歩みを止めたのは2011年のこと。それからしばしの時を経た2015年から『BOTA coffee』として新たな物語が動き始めている。オーナーの佐藤英人さんと、リノベーションの設計施工を手掛けた『caruru』の岡田涼さんに伺った。

創業から100年の歳月を傘店として歩んできた、前身の「洋傘のスズキ」。2011年に閉店するまで街を支えた顔のひとつだった。

2階には映画、写真展、雑貨店などポップアップストアや催事に開放している空間がある。
この場所の物語を、ずっと紡いでいくために。
「この店をリノベーションすることになったきっかけは、第1回 山形リノベーションスクール(※地域の課題を解決し、豊かな未来を築いていこうとする有志が集う実践の場)というのが2014年に開催されまして、そのときの再生対象案件がここだったんです。ボクは当時不動産業に従事しながらサブユニットマスターとして関わったんですが、いろいろな縁もあって、スクール開催から1年後には独立してこの店を開きました」と佐藤さん。店づくりの相談に動いた先が岡田さんの元だったという。
「caruru(※花屋兼内装デザインを手がける店舗として営業。2015年に実店舗は閉店)の雰囲気がすごく好きで、時間軸に左右されないモノに対する価値の見出しかたがすごくいいなと。それで岡田さんに頼めば絶対大丈夫だと信じていたんで」と話す。

オーナーの佐藤英人さん。
「前身は100年も続いていた傘屋さんだったという経緯と、その物語を継承していきたいという話を聞きました。そして傘というワードから店名も決めたいということだったので、雨音にも通じつつ佐藤さんが淹れる深煎りのコーヒーのイメージと、この場所の歴史的背景も併せて、〝ボタ〟という重さのある言葉はどうかなと話したんです」と岡田さん。

岡田涼さん/内装デザイン兼彫刻家。建材の質感を生かしたボタニカルな空間作りに定評がある。

雨が恵みとなる植物、ボタニカルの意味合いも重ねた店名とロゴも岡田さんが考案。

カウンター脇の棚には、山形にゆかりのある作家たちの作品が。
「内装に関してもボタの言葉に合うようテーブルに古材を使ったり床やインテリアを暗めに仕上げたり、カウンター横の壁は粗塗り用の土を使って素材感を出したり。オーナーの裁量で自由に作らせていただけた経験はとても貴重でした」と、互いを敬い共鳴し合うことで唯一無二な空間が生まれたようだ。
『BOTA coffee』の傘の下に集う人たちにとって、芳しく寄り添える時間が紡がれていく。
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