特集の傍流
山形県で4件目の日本遺産にも認定。私たちにもたらした多くの恵みと、その活用法とは。
「山寺と紅花」推進協議会事務局、山寺芭蕉記念館
山形県山形市
2018年5月24日、「山寺と紅花」にまつわる物語や数々の要素が「山寺が支えた紅花文化」として「日本遺産」に認定された。「日本遺産(Japan Heritage)」とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するもの。山形県では4件目となる。
ストーリーを構成するのは、山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町の4市3町。関係市町の縁が結ばれたことで、今後、観光面や地域の発展の面でも大きな効果が期待できる。
4市3町の結びつきで、最上紅花の故郷に光を
日本遺産を語る上で欠かせないのが、それを構成する様々な文化財群。その中には、紅花畑の景観や紅花染めの衣裳はもちろん、下記に紹介した、山形県東根市六田生まれの青山永耕が文久年間(1861~1864)に描いたものと伝わる「紅花屏風」や、紅花染めの衣装を身に着けて舞う舞楽をはじめ、上方文化とのつながりを示す雛人形、紅餅を筵(むしろ)に広げて干すさまを表現した笠を使って踊る「花笠まつり」、紅花を運んだ最上川の船頭が発祥と伝わる「芋煮」、山形に移り住んだ近江商人が伝えた「おみ漬け」といったものも含まれている。これらを活用し、発信していくことで、地域の活性化を図ることが日本遺産の目的だ。

青山永耕筆「紅花屏風」右隻 部分 山形県指定有形文化財 (谷)長谷川家寄贈・山寺芭蕉記念館所蔵 ※(谷)は◯の中に谷と記し「まるたに」と読む。
豊作を祈る春祭りの様子が描かれ、祝いの餅つきや、凧あげをする姿が見られる。いよいよ農作業が始まるという時期で、大川の付近では耕耘と種まきが行われている。 画像提供/山寺芭蕉記念館

青山永耕筆「紅花屏風」右隻 部分 山形県指定有形文化財 (谷)長谷川家寄贈・山寺芭蕉記念館所蔵
花摘みを経て紅餅が作られるまでの工程が、それぞれの作業ごとに詳しく描かれている。 画像提供/山寺芭蕉記念館

青山永耕筆「紅花屏風」左隻 部分 山形県指定有形文化財 (谷)長谷川家寄贈・山寺芭蕉記念館所蔵
紅花問屋で行われた荷造りの様子が描かれている(右側)。大石田で船積みされた紅花は、酒田で海船に積み替えられ、西回り航路で敦賀の港まで運ばれたといい、白帆の上部に様々な屋号が見られる(左側)。 画像提供/山寺芭蕉記念館

青山永耕筆「紅花屏風」左隻 部分 山形県指定有形文化財 (谷)長谷川家寄贈・山寺芭蕉記念館所蔵
京の紅花問屋(屋号から美濃屋とされている)と、京に運ばれた紅花の荷(下部分)。二階の座敷は、荷主と商談している様子を描いたものと思われる。 画像提供/山寺芭蕉記念館
認定を受け、7月には県、市町、関係団体による「山寺と紅花」推進協議会を設立。一丸となって「山寺と紅花」の魅力の発信や普及啓発に取り組むことを確認した。今年度は主に情報発信や普及啓発に注力し、県民に「山寺と紅花」に興味関心を持ってもらい、足を運んでもらうことを考えているという。
先日も、地域の人々と協議会役員とが一緒に山寺を散策する「山寺魅力探究ツアー」を開催したり、11月3日に行われた山形県立博物館の秋の博物館まつりにおいて、紅化粧体験や紅花のワークショップ、紅花に関する講演会、日本遺産構成文化財である林家舞楽の披露等を行うなど、その魅力に触れ、体感できる機会が創出されてきた。また、テレビ番組の放送や、主に中学生を対象とした紅花読本の製作などにより、幅広い世代に向けての意識醸成が進んでいる。
今後は認定内容の理解を深められる場や媒体づくり、地域づくりのために活躍する人材の育成を行う予定だという。「多くの方に〈山寺と紅花〉の魅力に触れて体験していただき、地域の振興につなげたい。また、地域の皆さんに郷土の魅力を再認識していただき、誇りと愛着を育んでいきたい」と協議会事務局はコメントしている。
※ページトップ画像は、河北町の谷地八幡宮宮司林家に伝わる「林家舞楽」。1,200年の伝統を持ち、宮中舞楽・四天王寺舞楽・南都楽所舞楽と並ぶ日本四大舞楽の一つとされ、重要無形民俗文化財に指定されている。

〈左〉林家舞楽の3番目「散手(さんじゅ)」。鼻高の面で鉾を持った勇壮な舞い。〈右〉舞楽の9番目は「陵王(りょうおう)」。紅花染めの豪華な装束。

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