特集の傍流

2020.12.26

山形の空を翔け、命をつなぐドクターヘリ。

2021年1月号(195号)空ノ,マモリビト。
山形県立中央病院 救急救命センター 武田健一郎医師、芳賀圭子看護師
山形県山形市

 空飛ぶ救命救急センターともいわれる“ドクターヘリ”。山形県では2012年から運航を開始しており、その拠点となっているのが山形県立中央病院だ。ドクターヘリの導入によって、県内全域をほぼ30分(飛島は約40分)でカバーできる高度救急医療搬送体制が整備され、救命率の向上と傷病者の予後改善につながっている。

 

空路と陸路の連携で地域医療を支える

 ドクターヘリのミッションは、一刻も早く現場へ医師を運ぶこと。重症度の高い患者に対して早急に治療を開始し、適切な病院へ搬送する。搭乗した医師が現場で医療行為を行える点が、救急車との大きな違いだ。パイロットや整備士、飛行管理や情報伝達を行うCS(コミュニケーションスペシャリスト)の役割も重要であり、消防機関との連携をはじめ、迅速かつ高度なチームワークが求められる。
 ドクターヘリの出動要請は119番通報を受けた消防機関が患者の重症度等を判断して行うもので、一般人が直接要請することはできない。出動したドクターヘリは、救急現場にもっとも近いランデブーポイント(救急車とドクターヘリの合流地点)に着陸する。取材が行われた11月現在で、県内のランデブーポイントは757箇所。しかし、これらのポイントも冬季は120箇所までに狭まる。確実な離着陸ができるよう、深い雪山でも消防隊員が雪かきをしてポイント整備を行うこともあるという。

 

飛行管理だけでなく、消防機関からのドクターヘリ要請を受ける窓口ともなるCS。

 

CSの植田雅士さん。業務は病院敷地内にある「ドクターヘリ運行管理室」で行う。

 

山形県のドクターヘリの運航は3人のパイロットが当番制で担当する。パイロットの瀧本弘道さん(写真右)、整備士の榊原利二さん(写真左)。

 

山形県の機体は7人乗りの最上級グレード。大きな機体は病院に訪れると比較的間近で見ることができる。見物人のなかにはドクターヘリに興味を持った乗り物好きの男の子も。

 

一刻を争う命の現場で闘う医師と看護師

 「フライトドクター」「フライトナース」になるためには、救急科での経験や集中研修など、それぞれ厳しい条件がある。日々命の最前線で働くドクターとナースに話を伺った。
 救急診療部長・救急室長でもあるフライトドクター、武田健一郎さんは子どもの頃から医師を目指し、救命の最前線へ、との思いからドクターヘリの導入当時から業務にあたっている。「ドクターヘリの活用によって、医療に恵まれない地域の患者さんも診ることができるようになりました。現場ではすべてひとりで判断しなければならないので大変ですが、患者さんのご家族から感謝のお手紙をいただいたりすると、やはり嬉しいですね」と武田さんは話す。

 

武田さんの趣味は、体力づくりも兼ねてランニング。一日10kmは走りこむとのこと。

 

 フライトナースの芳賀圭子さんは「現場ではドクターの診療介助や資機材の管理のほか、患者さんのご家族へのケアなど、いろいろなところに目を配らなければなりません。時間との勝負なので、段取りが何よりも大事です」と優しくも真剣な眼差しで語る。何が起きるかわからない状況を下支えするフライトナースは現場に必要不可欠だ。

 

「自分の健康管理も仕事の一部」と話す芳賀さん。ベテラン中のベテランが救命救急の現場を支えている。

 

フライトスーツはチームでデザインしたものを採用。背中には県章と山形県をPRする公式キャラクター「きてけろくん」が。

 

医療機器や医薬品を搭載した機内。山形県のフライトドクターは7名、フライトナースは8名。

 

 11月末時点で、令和2年度の出動件数は100件を超えている。ひとりでも多くの患者さんを救うため、「命をつなぐ翼」であるドクターヘリは、今日も山形の空を翔ける。

2021年1月号(195号)空ノ,マモリビト。

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