怪異の根っこに迫るべく、取材を敢行。長年語り継がれてきた現場の気配とは?

2023年8月号(226号)
特集|山形怪談-ものがたりの現場へ-
オナカマの里(中山町)、やまいだの塔(飯塚町)、主水塚(山形市)

夏の恒例となった怪談作家・黒木あるじと往くシリーズ。4回目となる今回は、最新刊「山形怪談」に収録されているものがたりの現場を訪ね、怪異の根っこに迫ります。

人はなぜ「怖い話」に惹かれるのか

現実世界では起こりえない超常現象、得体の知れない物の怪、超物理的な存在と交流する力など、私たちの周りに溢れる怪異の情報は、いつの時代も賑やかだ。そうした不思議な話や出来事に対し、嘘か誠かで区別してしまうのはたやすいが、まだ見ぬ世界への扉と考えたらどうだろう。知らないことだから怖い。では知ってしまえば?そんな編集部の好奇心の道しるべといえば、そう、黒木あるじ氏である。

怪談作家・黒木あるじさん。今号も氏の現地調査に同行させていただき取材を敢行した。

重版ヒット中のものがたりの世界へ

今年2月に竹書房より刊行された「山形怪談」は、山形市在住の黒木あるじ氏の真骨頂ともいうべき実話怪談集。県内各地に散らばっている怪しい話、伝承、禁忌などについて、その背景と史実に基づいた推測なども交えながら丹念な取材のもと書き記されている。その「山形怪談」のなかから「石の裏には──」「やまいだの塔」「もんどのくび」という3つの話の舞台へと赴き、怪異の根に迫るべく関係各位の協力のもと取材を敢行。収録作の一文を掲載するとともに、観察眼に長けた氏のルポルタージュも掲載し、現場に行かなければ感じえない怪の気配をお伝えする。

ちょっと不思議でちょっと怪しい話。知りたい? 知りたくない? 好奇心の扉を開くのはあなた次第です。

『山形怪談(竹書房)』黒木あるじ氏の近著「山形怪談」(竹書房)には、今回の特集で取材を進めた3話を含む52話もの山形の怪が収録されている。2月の発売以来、好評につき重版ヒット中。 

山形は怪で溢れているそれは、愉しくて怖い

今年はじめ、私は県内の郷土書や地域史に眠る「不思議で怪しい話」を『山形怪談』(竹書房怪談文庫)なる一冊の本にまとめて上梓した。書き手や語り手が怪談と怖がっていない逸話・雑話にも怪談が存在する。それらを一堂に介することで、山形の怪しい〈過去〉と〈いま〉を地続きにできないかと考えたのである。筆力の拙さゆえ、この試みがどれほど成功したかは心もとないところだが、読者には山形の知られざる魅力─自然や歴史の裏にひそむ、怪しくも愉しい別の顔─を感じていただけたのではないかと思っている。

岩谷十八夜観音の8月18日の例大祭の様子(2016年にgatta!取材班撮影)。かつては3、8、10月の18日を縁日と定め例祭が行われていた。

日常のなかにひっそりと眠る〝あやかし〟の地へ、いざ。

そう、山形の怪談は「はるかの昔の出来事」ではない。どれほど古い文献に記されていようとも、その残り香は現在も私たちの周辺に漂っている。たとえば建築にまつわる禁忌「大将軍」を気にする県民は少なくないし、夜泣きを治す「かんのむし」を幼少時に施されたとの体験も数多く語り継がれている。ならば、その残滓を求めて小さな旅をするのも一興ではないか。そんな思いから、今回は『山形怪談』の舞台をいくつか訪ね歩いてみることにした。はたして出てくるのは鬼か蛇か、それともさらに恐ろしいモノか──。(黒木あるじ)

オナカマが巫業で使用する「トドサマ」を観察する黒木氏。「トドサマ」は神降ろしの際の依代(神霊が乗り移るもの)となる。

gatta! 2023年8月号
特集|山形怪談-ものがたりの現場へ-

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