置賜に伝わる製法を、後世に伝えていくために。

2023年4月号(222号)
特集|山形的納豆メソッド
ゆきんこ(米沢市)

全国にファン拡大中調味料としての用途も

置賜地方の農家に伝統発酵食として伝わる「五斗納豆」。大豆の皮をとって2つに割り、塩と麹菌を混ぜ時間をかけ熟成させたもので、昔は豆二斗、麹二斗、塩一斗と合計五斗の大樽に仕込んだことから「五斗納豆」といわれていた。この糀納豆が「雪割納豆」の原型。

納豆に米こうじと塩を加えたのち、一定の温度で長い時間じっくりと発酵させた熟成塩こうじ納豆は、納豆菌の一次発酵と、米こうじ添加後の二次発酵による塩辛くも味噌のような豊かな風味が特徴だ。約70年に渡り愛され続ける商品だが、8年前に以前の製造元の廃業に伴い米沢市の佐野水産が事業を引き継いだ。同社では(株)ゆきんこを創業し、製造・販売を続けている。

「米沢生まれの伝統食品がなくなるのは非常に寂しいことなので、地域の伝統食品をなんとか残していこうと、身内で相談をして思い切って新会社を立ち上げたのがきっかけです。そしてこれからもっと雪割納豆だけでなく、いろんな食品の可能性を探していこうと思っています」と語るのは、社長の佐野恒平さん。

今回話をうかがった株式会社ゆきんこ社長補佐の佐野清亮さん(左)、代表取締役社長の佐野恒平さん(右)
約70年変わらぬ味「はじまりの雪割納豆」。『ゆきんこ』の社名はこのパッケージにある「雪ん子」が由来。
塩辛い中にも深いコクと旨味をもった定番商品の「雪割納豆」

いまの感覚も取り入れながら、古いものを大切にしていく

昔から冬季の保存食として重宝されてきた郷土食ならではの、深い旨みと塩辛さが特徴だが、雪割納豆に味噌を加えた「納豆汁の素」の発売や、新潟県上越地方に伝わる唐辛子を使った調味料「かんずり」を混ぜた商品が2019年米沢品質アワードを受賞されるなど、「雪割納豆」をベースにした新商品も定評を得ている。

「納豆菌とこうじ菌の働きで、グルタミン酸などの発酵由来の天然のうまみ成分が豊富に含まれるため、野菜スティックのディップにするなど調味料としても重宝します」とは、社長補佐の佐野清亮さん。置賜の伝統的な食文化が、さまざまな形で全国に広がりつつある。

「社名は雪割納豆のパッケージにある雪ん子が由来です。(株)雪割納豆としようかとも考えたんですが、これから会社として醗酵食品や地域の食文化にも関わっていきたいと考えて名付けました。雪国の食文化の承継と、未来の子供たちにしっかり地域の食品を残していくことを旨として、食に携わりながら古いものを大切にしていきたい」と社長の佐野恒平さんは語ってくれた。

素材の3要素は、国産大豆100%、山形県産米100%の糀、天然塩。商品誕生時から変わらないパッケージは、現在では作者不詳の版画がベース。商品価格は全て378円(2023年3月現在)
『ゆきんこ』の製造工場内にて。山形県産米100%の糀を加える。
納豆と糀を機械で攪拌していく。
納豆の粒を潰さないようにゆっくりと回しながら攪拌する。
計測器などは使わず職人の勘に頼る作業となる
攪拌されたこうじ納豆を桶に詰める
昔はこの攪拌作業もすべてヘラを使った手作業で行われていたという。
一定の温度に保たれた保管庫で、重石を乗せて長い時間じっくりと発酵する。
熟成塩こうじ納豆の製造はもちろん袋詰めも全て手作業だ。
手詰めされ包装を待つ「雪割納豆」。近年では発酵食品のブームも後押しし、インターネット販売など県外での売り上げも好調だそう。

gatta! 2023年4月号
特集|山形的納豆メソッド

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