特集の傍流

2017.10.23

産地としてさらに広がる、 やまがたワインの愉しみ方。

2017年11月号(157号)やまがたワイン考《前編》
リンゴリらっぱ/酒田の塩(高橋建築)/林農園(五一わいん醸造元)/
秋保ワイナリー(仙台秋保醸造所)/月山トラヤワイナリー
山形県新庄市/山形県酒田市/長野県塩尻市/宮城県仙台市/山形県西川町

 前記事のように、《前編》では、山形県のワインの歴史とワインに関わる人々について見てきたが、現在は様々な方法でワインや果実酒を楽しめるようになってきている。ワインは単に味を楽しむだけではなく、それを飲んだ土地、店舗、見せ方、食材の合わせ方に至るまで、全てがトータル的にブランド化され、評価されるもの。その土地との結びつきが如実に表れるからこそ、それぞれがその土地の味を出したワイン造りに奮闘し、夢中になる。そんな時代において、良質なぶどうから作られた県産ワインの質の高さを県内外で発信していくとともに、ワイン産地としての知名度を向上させていくことは、今後も一層求められていくに違いない。
 

県内でも活発化する、ワイン産地づくりの動き。

 ワイン産地づくりの動きは、農業の振興、耕作放棄地の有効活用、雇用創出、 観光資源の掘り起こしも期待できるため、全国的にも活発化している。山形県上山市においては、2015年に「かみのやまワインの郷プロジェクト」が始まり、醸造用ぶどうの生産拡大、ワイン生産量の増加を目標に、オリジナルワインの開発、ワインツーリズムの企画等を展開、翌年には市全体が構造改革特区「かみのやまワイン特区」として認定された。このほか、「山形県ワイン酒造組合」による情報発信や情報交換、「山形県若手葡萄酒産地研究会(山形ヴィニョロンの会)」による技術研修会など、ワイナリー同士の強いつながりによる、ワイン品質向上の取り組みが以前から行われている。
 

果実酒の表示基準適用で、産地ブランド力向上を。

 そんな中、2015年10月には「果実酒等の製法品質表示基準」が定められ、原料が国産ぶどうのみで、国内で製造された果実酒を、「日本ワイン」と表示できるようになった。適用開始は2018年10月で、国産ぶどうのさらなる需要増加が予想される。この表示基準に則ると、県産原料を使った多くの県産ワインは「山形ワイン」と表示できるため、産地としてのブランド力向上にも期待が持てる。
 それでは最後に、山形県産ワインに関するトピックを紹介して、ワイン考《前編》を終えることにしよう。
 
 

果実農園やワイナリーがつくる山形シードルが熱い。

 

 

 果樹王国山形で、地域的にも盛り上がっているシードルづくり。新庄市の果樹農家・加工品販売店「リンゴリらっぱ」では、減農薬で作った12種ものリンゴを独自にブレンドし、タケダワイナリーで委託醸造。酸化防止剤無添加、フレッシュな香りときめ細かな泡が特徴の辛口シードルで好評を得ている。創業90年の地域で唯一の果樹専業農家「荒井りんごや」を受け継ぎ、現在、佐藤春樹さんと遠藤拓人さんの2人で経営中。佐藤さんは「自家醸造を目指し季節ごとの果物で加工品を作り、この場所でカフェも開けたら」と今後の展開にも期待大だ。

 

イラストレーター「100%ORANGE」が描いたラベルも話題の、シードルや果物ジュース。


 

 

話題の赤ワイン塩に赤のほか、白・ロゼも登場

 

 

 ワインと味わう肉料理は勿論、天ぷら・サラダ等にお薦めのワイン塩。「酒田の塩」からリリースされ話題の赤ワイン塩に加え、白、ロゼが誕生した。長年に渡る試行錯誤で、使用している月山ワインの色が鮮やかに出る製法に成功。食卓の彩りにも使いたい逸品だ。

 

自然の旨みが引き立つワイン塩は、鳥海山の伏流水を含む吹浦の海水とワインを釜で煮込み、ほのかにワインの香りが漂う。


 

 

世界に誇る桔梗ヶ原メルローは赤湯がルーツ

 

 

 国際コンペティションで金賞、世界に冠たる桔梗ヶ原メルローの醸造元である信州のワイナリー「五一わいん」。今も生きるそのメルローの木は、昭和27年に創業者の林五一氏が、地元・長野県塩尻より比較的温暖な、赤湯のワイナリーから譲り受けて接ぎ木し、栽培を始めたもの。その後も凍害などを乗り越え、戦後の産地の危機を救った。古木と写るのは、代表取締役の林幹雄氏。

 

 

 

コラボでヴィニュロンが興しあう仙山交流

 

ヤマガッタ小松さん、ベルウッドヴィンヤードの鈴木さんの委託醸造先である秋保ワイナリー。


 

 2015年12月に秋保温泉郷にオープンした仙台初のワイナリー、「秋保ワイナリー」。ここでは、「仙台や山形のワインをともに盛り上げていきたい」との気持ちから、ワイナリーの旗揚げを志す山形の新規就農者とコラボレートし、東北の活性化にも励んでいる。現在の東北が抱える震災による諸問題や、農業の後継者不足などに対し、地域資源を繋ぎ地域活性を促す拠点として誕生した秋保ワイナリー。「仙山」のヴィニュロン(ワインの作り手)による交流のみならず、志のある人が集う場所として、また、土壌づくりや環境にも熟慮した新鋭ワイナリーとして、熱い視線が注がれている。

 

若手のワイン醸造をサポートしている同ワイナリー。積極的な技術交流も行われている。


 

 

 
 

明媚なワイン産地にあるべき、歴史を紡いだファクトリーショップ

 

 

 江戸時代から残る酒蔵を活かし今春リノベーションされた、「月山トラヤワイナリー」内のファクトリーショップは、美しい景観に溶け込んだ必然を感じる佇まい。デザインと設計は、山形市に拠点を置く建築家にして、古民家のリノベーション等でも定評のある井上貴詞氏によるもの。

 

 

 当時の梁を残しつつ、古い長持や箪笥は什器に再利用。地元の西山杉を使ったワイン箱など、古新が粋に両立されている。店頭のワインを一部無料試飲できる、角打ちカウンターもある。

 

 

 今年の月山山麓ヌーヴォーも発売中で、「試飲カウンターでもぜひ味わっていただきたいですね」と工場長の大泉奈緒子さん。

 

店内を紹介する大泉さん。


 

 様々な課題と向き合いながら、それでも盛り上がりを見せる山形のワインは今後どのように展開していくのか。生産者と消費者が一緒になって行う「ワイン産地づくり」のますますの実りを、楽しみに味わいたい。

 

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