品質本位の姿勢は変わらず。遊佐から世界へ、上質なウイスキーを

2024年5月号(235号)
特集|令和の時代のナイスなお酒
遊佐蒸溜所(遊佐町)齋藤美帆さん

未来を見つめ世界を目指すウイスキー造りへの挑戦

鳥海山に抱かれるような美しいロケーションが目の前に広がっている。ここで造られているのは琥珀色に輝くウイスキー。『遊佐蒸溜所』のはじまりはある危機感だったという。蒸溜所の本社「金龍」は、9つの酒蔵の出資による株式会社。おもに焼酎製造を手がけており、その9割以上が県内で流通している。そんな状況で見えてきたのは人口減少によるマーケットの縮小。新しい経営の柱を模索するなかで佐々木雅晴社長が出合ったのは世界的に評価が高まっていたジャパニーズウイスキーだった。

酒造りの精神を受け継ぐひたむきな職人の姿

2018年の蒸溜所開設から携わる齋藤美帆さんは「始めは何もかもが不安でしたが年々お客様の反応を聞くにつれ、いいものを造らねばという使命感が増していきました。初心を忘れず品質本位な姿勢を受け継いでいきたいです」と変化を語る。焼酎・日本酒造りで培われた品質を磨く実直な姿勢が、世界へ誇る1本を生み出している。

スコットランド伝統の熟成方法で原酒約3,400樽が眠る熟成庫。地下に通う鳥海山からの水脈が鍵となり適切な湿度が保たれる。
鳥海山(日山)の麓、田園地帯に佇む遊佐蒸溜所。年々熟成庫の増設がなされている(画像提供:遊佐蒸溜所)
遊佐蒸溜所の製造工場棟。外観が近々模様替えされる予定だ(画像提供:遊佐蒸溜所)
蒸溜所の立ち上げ時期からウイスキー製造にかかわる製造課主任の齋藤美帆さんは、昨年4月から7人の製造チームを束ねる責任者に。「現場を離れて全体を見ながら指示・計画を行う立場です。大変ですがやりがいがあります」と齋藤さん。
蒸留の際に一番風味が良い部分を取り出す「ミドルカット」の作業を行う齋藤さん。
「ミドルカット」を行う際に使用する機器。アルコール度数が高すぎて余計な香りが入っている部分を取り除き、熟成に使いたいスピリッツをテイスティングやノージングによって選別する熟練を要する工程だ。
スコットランドのフォーサイス社特注のポットスチルを使用し蒸留。
大麦麦芽はスコットランドから、酵母も海外から輸入したものだが、鳥海山の伏流水や土壌を最大限に引き出すための製造法を実践している。
フルーティーな香りを生み出すダグラスファー(米松)の発酵槽は、遊佐蒸溜所のこだわりのひとつ。
ポットスチルはバルジ型とストレートヘッド型を採用。ストレートヘッド型では、どっしりとした重厚な味わいのスピリッツ生み出し、バルジ型のポットスチルによって、蒸溜所の味を特徴付ける繊細でクリーンな原酒を生む。
右/春の風情を感じる4月発売の新作。ファーストフィルのバーボン樽原酒を厳選し、キーモルトとしてシェリー樽原酒をヴァッティングした『YUZA シングルモルト・ジャパニーズウイスキー・スプリング・イン・ジャパン2024』。右から2番目/希少な「ミズナラ」の樽を使用。遊佐蒸溜所らしいフルーティさをベースに心地よいバニラ、ほんのりとピートのアロマが重なる『YUZA シングルモルト・ジャパニーズウイスキー・サードエディション2023』※どちらも数量限定

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